初めての介護食の作り方！しっかり栄養が摂れる食材の選び方もご紹介

高齢者になると、通常の食事が食べにくくなってしまいます。介護食を初めて作る場合、どのような形態の食事を作るべきか、どの食材を使うべきかなど、悩む方も多いのではないでしょうか？本記事では、介護食の必要性に触れながら、介護食の種類や食材の選び方、さらに作り方のポイントについて解説します。

介護食とは？なぜ高齢者には必要？

介護食とは、噛む力や飲み込む力が低下した高齢者が食べやすいように作られた特別な食事のことです。
加齢や病気などが原因となり、食べるための体力や噛む力、飲み込む力が低下してしまい、通常の食事が食べにくくなります。食べやすさや栄養バランスに配慮された介護食は、高齢者の健康を支え、安心して食事を楽しむためのものとして必要とされています。

介護食の区分｜食べる人に合わせて調理をしよう

「食べやすい介護食を作りたい」と思っても、具体的にどのようなものを用意すればよいか迷うこともあるかもしれません。そんなときは、日本介護食品協議会の『ユニバーサルデザインフード®』を参考にすると、食べる方に合わせた介護食を提供しやすくなります。
ユニバーサルデザインフード®は、特に高齢者や咀嚼・嚥下（えんげ）機能が低下した人に向けて食べやすさに配慮した食品のことで、レトルト食品や冷凍食品などさまざまな種類があります。パッケージには区分形状が表示されており、食品の形状や、やわらかさなどをもとにして下記の4つに分類されています。

ユニバーサルデザインフード®の区分形状

• 容易に噛める
• 歯茎で潰せる
• 舌で潰せる
• 嚙まなくてよい

ここからは、ユニバーサルデザインフード®の4つの分類について解説します。

容易に噛める

「容易に噛める」と表示があるものは歯茎で噛める程度のかたさで、高齢者でも無理なく食べられる形状・かたさのものです。

例えば、普通〜やわらかく炊いたご飯や厚焼き卵、やわらかい肉じゃがなどが挙げられます。

歯茎で潰せる

「歯茎で潰せる」ものは、歯が無くても歯茎で押し潰せるやわらかさである食品です。

例えば、やわらかく炊いたご飯〜全がゆ、だし巻き卵、具材が小さめのやわらかい肉じゃがなどが挙げられます。

舌で潰せる

「舌で潰せる」ものは舌で軽く押すだけで潰せる食品です。

例えば、全がゆやスクランブルエッグ、具材が小さめのとてもやわらかい肉じゃがなどが挙げられます。

噛まなくてよい

「噛まなくてよい」ものは、完全なペースト状あるいは液状の料理です。

例えば、ペーストがゆ、具なしのやわらかい茶碗蒸し、ペーストの肉じゃがなどが挙げられます。

介護食の種類と作り方

「いつも食べている食事で介護食を作りたい」という場合、手づくりで対応することもあるでしょう。食材を細かく切る、ペースト状にすることで、食べやすく工夫できます。次から介護食の種類と作り方について見ていきましょう。

軟菜食

軟菜食は通常の食事と同じ具材を使いますが、大きさややわらかさを調整した食事で、通常の食事では噛むのが難しい方でも食べられます。

軟菜食の作り方・ポイント

• やわらかく煮る：魚や肉、野菜をよく煮る、茹でるなどしてやわらかく仕上げる
• 食べやすくカット：一口大にカットして食べやすくする
• かたい食材を使わない：根菜類などのかたい食材を違う食材に変更する

軟菜食は歯が弱い、あるいは歯がない人でも食べやすく仕上げます。通常の食事形態に近い形状であるため、心理的な満足感も得られる食事です。

きざみ食

きざみ食は食材を細かくきざみ、咀嚼の負担を軽減する食事のことです。みじん切りや小さな角切り（5mm〜2cm程度）にすることで、噛む力が弱い人も食べやすくなります。

きざみ食の作り方・ポイント

• 煮る・蒸す・茹でるなど食材を調理した後に刻む
• みじん切りや小さな角切り（5mmから2cm程度）にする
• 必要に応じて「あん」や「だしとろみ（だし汁にとろみをつけたもの）」を加えてまとまりをつける

きざみ食は、噛む力が低下しているが、飲み込む力はある方向けの食事です。きざみ食は食材がバラバラになってしまうため、嚥下機能が低下している人は、むせや誤嚥（ごえん）を起こす恐れがあります。誤嚥を防ぐためにも、あんやだしのとろみで食べやすくする工夫は必要です。

また、食材を種類ごとに刻むため調理者の負担が増える場合もあります。形が崩れて盛り付けに配慮が必要になる点も理解しておきましょう。

ミキサー食

ミキサー食は調理済みの食材をミキサーやブレンダーで細かくすり潰し、ペースト状やポタージュ状にした食事のことです。咀嚼・嚥下が困難な人に向けて、飲みこみやすくなめらかな形状に調整された食事です。

ミキサー食の作り方・ポイント

• 調理後の食材に水分（塩分が入っていないだしやスープなど）を加えてミキサーにかける
• ミキサーにかけたものにとろみ剤を加えてとろみをつける
• ミキサーにかけた食材を盛り付ける

飲み込む力が低下した人も誤嚥のリスクを減らしつつ食事を楽しめます。ただ、加える水分の量が多いと食材のかさが増えて食べきれないことがあります。適切なとろみを維持しつつ、加水量は必要最低限におさえるのが理想的です。

また、食材ごとにミキサーにかけて盛り付ける手間があるため、調理者の負担はあるでしょう。

ソフト食

ソフト食は、食材をミキサーにかけてなめらかにしたあと、専用のゲル化剤を加えて固めた食事です。ミキサー食と異なり、固める際に型を使うため見た目の維持ができます。ソフト食は噛む力・飲み込む力が低下した人向けの食事で、歯茎や舌で潰せる程度のかたさに調整されます。

ソフト食の作り方・ポイント

• 調理済みの食材をミキサーにかける
• 専用のゲル化剤を加えて、型（魚や肉、丸型、花型など）に入れ、冷蔵庫で固める
• 固まったら皿に盛り付ける

ソフト食はきざみ食やミキサー食と異なり、普通食と同じ形に近づけつつ、噛む力・飲み込む力が弱い人にも食べやすいのがメリットです。ただし、ミキサーにかける際に味が薄くなることや、ミキサーでのすり潰し・型抜きなど調理が手間であることがデメリットです。

栄養を摂るために！介護食に向いている・向かない食材

ここからは、介護食に向いている食材と向いていない食材について解説します。加齢によって食欲がなくなる、噛む力や飲み込む力が弱くなるといったことが出てくるため、食べやすい、かつ栄養がある食材を選ぶことがポイントです。介護食を作るうえでの食材選びとして参考にしてみてください。

介護食に向いている食材

介護食に適している食材は「嚥下しやすい」「消化がよい」「栄養価（特にタンパク質）が高い」食材です。具体例を下記に挙げました。

介護食に向いている食材（例）

• ご飯（おかゆ・軟飯）
• やわらかいうどん
• 骨無しの白身魚（たら・かれい・さわらなど）
• かまぼこ
• ツナ缶（ノンオイル・水煮）
• 卵（茶碗蒸しなど）
• 木綿豆腐・絹ごし豆腐
• 煮るとやわらかくなる繊維質の少ない野菜（ほうれん草・なす・大根など）
• バナナ
• ヨーグルト
• ゼリー・プリン

このように介護食は、のどの通りや消化がよいもの、加熱してやわらかくなるものがおすすめです。

介護食に向かない食材

逆に介護食に向いていない食材の特徴としては、「かたい」「水分が少なくパサついている」「粘りがある」「まとまりがない」などです。これらの食材は、噛む力・飲み込む力が低下している高齢者にとって食べにくく、誤嚥を起こす可能性もあるため、使用は避けたいところです。

介護食に向いていない食材

• 繊維が多い根菜「ごぼう」「れんこん」「セロリ」
• かたくて噛みにくい「ナッツ類」「フランスパン」「生の野菜・果物」
• 粘りがある「もち」「白玉団子」「大福」
• 水分が少なくパサつく「赤身肉」「ゆで卵」「クッキー」
• まとまりにくい「ひき肉・そぼろ」「炒り卵」
• 飲み込みにくいサラッとした液体「飲み物」「汁物」

これらの食材は、介護食が必要な方にとって食べにくい食材です。加熱や食材カット、とろみをつけるなどして、食べやすくかつ安全に食べられるように工夫しましょう。

市販品の活用も検討しよう

介護食を手づくりですべて対応しようとすると、調理する人にとっては大きな負担になります。そのため、市販の介護食品や栄養補助食品を食事に活用することも検討しましょう。また、通常のプリンやゼリーといったやわらかく飲み込みがしやすい商品もおすすめです。

「食事だけではタンパク質などの栄養が足りているか心配」という場合は、手軽にタンパク質を摂取できる商品を活用してみましょう。鈴廣蒲鉾の「サカナのちから さっとタンパク」はいつも食べる食事に振りかけ、混ぜるだけでタンパク質を補える優れものです。

さっとタンパク

介護食を作るうえでおさえたいポイント

介護食は通常の食事とは異なり、いくつかポイントや注意点があります。

盛り付け・彩りを意識する

食欲を保ち、満足感を得るためにも、盛り付けや彩りを工夫しましょう。高齢になると体調の変化などで食欲が落ちやすくなりますが、料理の色合いや形、盛り付けを工夫し、「食べたい」という気持ちを引き出すことが大切な要素です。

特にミキサー食やソフト食は形が崩れやすく、見た目が単調になりがちです。食材ごとにミキサーにかけるなど、ひと工夫することで食欲をそそる見た目になります。

飲み物にもとろみをつける

誤嚥を防いで、安全に飲み物を飲みこめるよう、飲み物にとろみをつけましょう。飲み込む力が低下している場合、サラッとした液体は気管に入りやすく、むせや誤嚥を引き起こす恐れがあります。

飲み物などの液体にとろみをつけることによって、飲み物がのどをゆっくり通過するため、飲み込みやすくなります。適度なとろみをつけて飲みやすさと安全性を確保しましょう。

塩分は控えめにする

高齢になると味覚の変化によって塩味を感じにくくなり、塩味が濃い食事を好むようになります。そのため、介護食では、塩分を控えめにする工夫が大切です。

素材の味を活かし、薄味で調理をしましょう。だしの旨味を活用して、適切な塩分量を守り、塩分の過剰摂取を防ぐとよいです。

介護食で高齢者や介護が必要な方の健康を支えよう

通常の食事が噛みづらい、あるいは飲み込みづらいと感じる高齢者にとって、介護食は大切な食事の手段となります。

適切なやわらかさやとろみの調整によって高齢者が安全に食事を楽しむことができます。また、食材の形や盛り付け、彩りを意識することによって、食欲を維持することにもつながります。

ただ、介護食は通常の食事よりも手間がかかるため、調理者の負担にならないよう市販品や栄養補助食品等も活用しましょう。