
「熱中症は炎天下で起こるもの」と思っていませんか?実は、熱中症の発生場所として最も多いのは「住居内」。なんと屋外よりも自宅の方が危険な場合があるのです。今回は、室内で熱中症が起こる原因と、今日から実践できる対策をご紹介します。
総務省消防庁の統計によると、熱中症による救急搬送者のうち約4割は住居内で発生しているそうです。その背景には、2つの原因があります。
まず、近年の住宅は気密性が高く、熱がこもりやすい構造になっていることです。日中に蓄えられた熱が夜になっても抜けず、就寝中に熱中症を発症するケースも少なくありません。
もう1つは、室内では日差しが遮られているため屋外よりも直接的に暑さを感じにくいことです。エアコンをつけずに我慢してしまう人も多いのではないでしょうか。湿度が高いと汗が蒸発しにくく、体温がうまく下がらないため、室内熱中症の大きな原因となります。
「まだ元気だし、大丈夫」と思う方も、要注意です。実は、40代を過ぎると体は少しずつ変化しています。
最も大きな変化は、体が暑さを感じづらくなることです。人には肌に温度を感じる受容器があり、暑さ・寒さを脳に伝えています。しかし、加齢によってセンサーの感度が弱くなり、暑さ・寒さを正確に脳に伝えることが難しくなります。
また、喉の渇きを感じるセンサーの働きが徐々に鈍くなり、気づかないうちに脱水が進みやすくなります。仕事や家事に集中して、水分補給が後回しになりやすくなることも。在宅勤務中、集中していて気づけば何時間も水を飲んでいなかった…という経験はないでしょうか。
さらに、筋肉量の減少です。実は熱中症のなりやすさには筋肉量が大きく関係しています。筋肉には体内の水分を蓄える重要な役割を担っており、汗をかいた分の水分は筋肉内から補われています。しかし、加齢とともに筋肉量が減少することで、水分が補えなくなり、熱中症リスクの上昇に直結するのです。
まずはエアコンを適切に利用しましょう。推奨は、室温28℃以下、湿度60%以下が目安です。「電気代がもったいない」と我慢するのは禁物。体調を崩すと医療費の方がコストがかかってしまうことも。
体感に頼らず、温湿度計を置いて数値で確認するのがおすすめです。扇風機やサーキュレーターを併用することで、冷気が部屋全体に行き渡り、効率よく室温を下げられます。

喉が渇いたと感じた時点で、すでに脱水は始まっています。脱水が起こると、血液の循環が悪くなり、発汗ができず、さらに熱中症が進んでしまいます。
「1時間にコップ1杯」を目安に、渇きを感じる前に飲む習慣をつけましょう。特に起床時、入浴の前後、就寝前は水分が失われやすいタイミングです。
大量に汗をかいたときは、水分と一緒に塩分の補給も忘れずに。汗とともにナトリウムなどのミネラルも失われるためです。
体そのものを暑さに強くすることも大切な熱中症対策です。ウォーキングなどの軽い運動や湯船に浸かる入浴で、日頃から適度に汗をかく習慣をつけると、体が暑さに順応しやすくなります。
そして、十分な睡眠とバランスの良い食事。この土台があってこそ、体は暑さに対抗できるのです。

夏は食欲が落ち、そうめんや冷やし中華など炭水化物中心の食事に偏りがちな方も多いのではないでしょうか。手軽に食べられる反面、こうした食事だけでは体に必要な栄養素が不足してしまいます。
特に注意したいのが、次の3つの栄養素です。
1つ目は、糖質をエネルギーに変える「ビタミンB1」。不足すると、疲労感やだるさの原因になります。豚肉やうなぎ、大豆製品に多く含まれる栄養素です。
2つ目は、汗とともに失われるカリウムなどの「ミネラル」です。特にカリウムが不足すると筋肉の働きが低下し、夏バテ特有の脱力感につながります。野菜や果物、海藻類がおすすめです。
3つ目が、筋肉や血液など体そのものをつくる「タンパク質」です。肉・魚・卵・大豆製品に含まれます。
これらが不足した状態が続くと、疲労が抜けにくくなり、体力が落ちてさらに食欲が湧かない…という悪循環に。その結果、夏バテや熱中症にもかかりやすい体になってしまうのです。
特に、熱中症対策のカギを握る栄養素がタンパク質です。
先述した通り、体内の水分の多くは筋肉に蓄えられており、筋肉はいわば体の「貯水タンク」です。筋肉はその約75〜80%が水分でできており、体の中で最も多くの水分を蓄えている組織と言われています。
しかし、加齢によって、知らず知らずのうちに体の「タンク」が小さくなっている可能性も。筋肉量が減ると体に蓄えられる水分量そのものが減り、同じ量の汗をかいても脱水に陥りやすくなります。
タンパク質をしっかり摂って筋肉量を維持することが、熱中症に強い体の土台になるのです。
タンパク質が不足すると、血液中のアルブミンというタンパク質が減少します。アルブミンには血管内に水分を保持する働きがあるため、不足すると血管内の水分が減り、血液量の減少につながります。
血液は、体の隅々まで熱を運んで皮膚表面から放出したり、汗の材料になったりと、体温調節の要となる存在です。血液量が減ればこの働きが滞り、体に熱がこもって熱中症のリスクが高まってしまいます。
食欲が落ちてタンパク質の摂取量が減りやすい夏こそ、意識的にタンパク質を補給することが欠かせません。
タンパク質が大切と分かっていても、食欲が落ちやすい夏に肉や魚をしっかり食べるのは簡単ではありません。忙しい方にとって、毎食バランスの取れた食事を用意するのも大変です。