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かまぼこができるまで⑨「成形・中掛け」職人 須藤隆太

鈴廣かまぼこでは国家資格を持つ職人が、日々魚と向き合い、素材の力を感じていただけるかまぼこを作っております。

全13回の連載でお伝えしている伝統的なかまぼこの作り方。今回は成形の3つの工程の真ん中、「中掛け」についてご紹介します。ライターの土屋朋代さんに、職人の須藤隆太をインタビューしていただきました。

*本連載は「鈴廣の職人技」サイトの職人インタビュー(聞き手:土屋朋代)から転載したものです。

美しい扇型を「一回できめる名人」

形を整えることに加え、火の通りが均一に入るよう決められた重量に揃える必要があるのだが、これを一回できめなければならない難しさもある。すり身は時間の経過と共に質が変化していくため、1本に時間をかけて何度も手直しすることが許されないのだ。

この責任ある工程を若くして任され、美しい扇型を「一回できめる名人」として職人たちの間でも敬われているのが、入社14年目の須藤隆太だ。

写真上:かまぼこが徐々にトンネルの形になってくる

 

素早く盛って形と重さをぴたりと揃える

中掛けに携わるようになって現在7〜8年目というが、はじめは、中掛けをしたかまぼこを次工程の先輩職人に渡しても無言で返されたのだとか。


「10本作ったら9本戻ってくるペースでしたね。何度もくじけそうになりました。」


苦笑しながら当時を振り返る須藤だが、そこから毎日試行錯誤を重ね少しずつ腕を磨き、ようやく形になってきたと感じたのは、始めてからなんと3〜4年目というから、いかに習得が難しいかが分かるだろう。

「今では重さも大体感覚で分かりますよ。ひとつのかまぼこの重さは板込みで320gと決まっているのですが、許容誤差は1g程度。1回でぴたっときまると気持ちいいですよね。」


須藤の流れるような手さばきは見ているだけでため息もの。無駄のない動きから機械のような正確さで美しい形のかまぼこが形作られていく。

高い意識をもって理想の形を追求する

写真上:一発で形と重さをきめる

青森出身の須藤は、大工の父親の背中を見て育ったこともあり、かねてから職人志向。

魚釣りが趣味だったことから魚に携わる仕事に興味があり、青森以外のエリアも見てみたいと、思いきって関東の鈴廣に就職を決めた。

「はじめは寮生活なのですが、年齢が近い職人が多いので助け合って生活していました。同僚との距離も近くなるのでみんな仲はいいですね。切磋琢磨するライバルでもあり、プライベートで遊ぶ友達でもあり、和気あいあいと楽しく仕事ができています。」

魚釣りに加え、小・中・高校と没頭し現在も会社のチームで活動しているサッカー、さらには将棋も嗜むという多趣味な須藤。


「すべてかまぼこづくりにいい影響があるんですよ。魚釣りは釣ってさばくまで自分でするので魚の知識が深まりますし、サッカーはチームプレイのノウハウを学んだりや体力作りに役立ちます。そして将棋では集中力と先を読む力が養われていると思います。」

近所にあるなじみの飲食店に自分の将棋盤と駒を置かせてもらい、店の常連と将棋を打つのが日常なのだとか。

そんな須藤が日々心がけていることは?


「“仕事”と“作業”の違いを常に意識するようにしています。仕事とは頭を使って能動的にするもの、作業は頭を使わずに受動的にただ体を動かすこと。これは昔先輩職人から投げかけられた言葉です。レベルの高い“仕事”を目指したいですよね。」

常に高い意識でかまぼこづくりに取り組む須藤が、155年あまり受け継がれてきた鈴廣かまぼこの理想の形を追い求め続けている。

Written BY Tomoyo Tsuchiya

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