鈴廣解体新書 鈴廣「千世倭樓(ちょうわろう)」に欠かせない、小田原の原木しいたけ

小田原鈴廣の食事処「千世倭樓」の人気料理のひとつに、かまぼこのかき揚げがあります。
鈴廣自慢のかまぼこと小田原野菜を組み合わせた食べごたえのあるかき揚げは、「美藏」の蕎麦と一緒に、「大清水」「潮の音」では和食膳の定番として提供されます。

かき揚げに使われる地元小田原産の肉厚で香りよく、うま味の濃い原木しいたけ。
鈴廣から徒歩圏内にある広川椎茸園の広川公一さんに、椎茸の育つ小田原の風土について伺いました

小田原の森の恵みも育む名水「箱根百年水」

「小田原の空気の澄む静かな山あいに、私達の広川椎茸園はあります。鈴廣からも近くて、澤瀬文男調理長は、ときどきこのあたりを散歩しているそうです」。

「この地で原木しいたけを栽培して40年以上になります。原木しいたけ栽培は、重いホダ木の移動など重労働で手間がかかりますが、うま味があり、香りのよい椎茸ができます。さらに質の良いしいたけを育てられるのは、小田原の豊な地下水のおかげ。気温の上がる夏場はこの地下水をしいたけのハウス内に散水し、天然のクーラーとしても活用しています。なんと言っても、しいたけは新鮮さが命。鈴廣には毎回採れたてを届けていますので、常に新鮮なしいたけを調理してもらっています」。

“さくさく”と“ぷりぷり”が楽しい、かまぼこのかき揚げ

千世倭樓の定番料理「かまぼこのかき揚げ」は、広川椎茸園のしいたけはもちろん、玉ねぎなどの野菜、海老など、小田原の海の幸と山の幸が組み合わさっています。ボリューム感がありながら、軽やかな衣で食べやすいと人気。

「加熱すると“ぷりぷり”の食感に変わるかまぼこを主役に、しいたけの香りや玉ねぎの甘味、海老のうま味が盛り上げます。米油を使って揚げることで、衣もさらに軽く仕上げます」と、澤瀬調理長。

千世倭樓のおせち重は、地の魚・野菜をふんだんに使用し、吟味した素材をつかい、一品一品丹精を込めてつくられています。毎年宮中歌会始のお題にちなんだものとなっており、今年のテーマは「実(じつ)」。そのおせち重にも、広川椎茸園のしいたけは欠かせないそう。「小田原の自然が育む食材たちに、鈴廣の味は支えられています。小田原の自然と人に感謝して、これからもおいしくて体に良いものを、お客様にお届けしたいと思っています」。

text by Saori Bada / photographs by Hiyori Ikai

この記事を書いた人

馬田草織

編集者・ポルトガル料理研究家。料理雑誌などで編集者・ライターとして活躍するかたわら、自宅でポルトガル料理教室を主宰。Web「cakes」にてお酒に合うポルトガル料理を紹介する「ポルトガル食堂」を連載中。
近著『ムイトボン!ポルトガルを食べる旅』(産業編集センター)など著書多数。

http://badasaori.blogspot.com/

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