鈴廣解体新書 文化財級の建築を堪能できる、和みの食空間「千世倭樓(ちょうわろう)」とは

料理をさらに引き立てる、特別な空間。小田原市にある鈴廣かまぼこの里には、食事をより心地よく楽しんでもらえるように、職人技を尽くした場所がたくさんあります。

その中心となるのが、日本各地から移築した、見事な伝統建築の数々で構成されている「千世倭樓」。「ちょうわろう」と読みます。割烹の「潮の音」、会席の「大清水」、そばの「美蔵」、茶房の「しゃざ」の4つの食事処に分かれていて、それぞれに個性的。

どんなところか、ちょっと覗いてみましょう。

千世倭樓(ちょうわろう)という名前の由来

ちなみに一風変わったこの名前は、永い時を表す「千世」、日本・和の意の「倭」の漢字を組み合わせて、“ちょうわ(調和)“と読み、「千年の世にも続いていく、調和のとれた世の中の象徴たる建物であれ」という想いが込められています。かまぼこが職人技による伝統食であるように、日本各地に残る木造建築もまた、職人の伝統技によるもの。そんな、いつまでも永く受け継ぎたい和の文化への思いが、この食の空間に表れています。

職人の粋を集めた巧みな建築が、食事時間の質を高める

メインエントランスを構える書院造りの母屋は、200年以上昔の明治中期に建てられたもの。

フロントロビーは、天井まで10メートルを超す吹き抜けが壮観です。この母屋は、秋田県旧平鹿郡大森町(現在の横手市)から移築した、当時全国屈指の山林王だった菊池家の旧住宅。職人技の粋を集めた巧みな造りの建物は、完成まで20年有余年かかったといわれています。素晴らしい天然木材と職人技術により温かい雰囲気が生み出され、一歩入ると落着いた空間が広がります。

入って正面奥は茶房「しゃざ」。箱根山系の伏流水「箱根百年水」を使ったコーヒーやお抹茶、甘味が中心で、開放感のある明るい空間は、ちょっとひと休みに最適。

右手に広がるのが割烹「潮の音」。鈴廣の味や地元素材を知り尽くした料理人による和食は、朝獲れの地魚や小田原の地野菜を使った御膳もの、会席料理のコースなどが選べ、緑が目に優しい庭を眺められる落ち着いた空間で、ゆったり食事できます。

また、正面左手のそば「美蔵」は、母屋と棟続きの土蔵の中にあります。内部が総漆塗りの見事な空間の中で、箱根山系の伏流水「箱根百年水」で毎朝仕込むうちたてのそばが楽しめます。書院造りの母屋と土蔵は、2002年より国の登録文化財に指定されていて、この建物の歴史的価値を裏付けています。

特別な集いを開くなら、合掌造りの豪奢な古民家を貸し切りで

そして、記念日のお祝いや懇親会など、特別な時間を過ごしたい人にぜひ訪ねて欲しいのが、母屋とはなれの会席「大清水」。建築マニアでも思わず息をのむような、豪奢な二階建ての古民家です。飛騨山地・富山県八尾町にあった合掌造りで、建てられたのは200年以上昔の江戸時代中期。豪雪地帯の冬を乗り越えてきた逞しい家屋は、美しく堅牢な木材をふんだんに使い、釘を1本も使わない工法でできていて、見応え十分。この豪奢な空間を生かし、二階で挙式、一階で披露宴を開かれたご夫婦や、見事な日本の伝統建築を体感して欲しくて、海外からのゲストをもてすために東京から来る方など、この空間に魅せられた人が、さまざまに過ごしています。

「私たちの料理は、自然の恵みで成り立っています。100年を経て届けられる箱根の湧き水はもちろん、小田原の生命力あふれる地野菜、目前に広がる海がもたらす鮮度抜群の海産物が主役。それらの旬の豊かさを、地元の農産物・海産物生産者の協力を得て、お客様に感じていただけたら嬉しい」。鈴廣の味を30年以上守り続けてきた料理長の澤瀬文男さんは、そう話します。

千世倭樓で頂ける料理は、小田原港で水揚げされた魚など、小田原の食材がふんだんに盛り込まれた料理です。4つの食事処の詳細はこちらを確認ください。
https://www.tiowa.jp/plan/

9/28公開の鈴廣解体新書では千世倭樓の料理について、地元小田原の農産物生産者の方々や、鈴廣料理長・澤瀬文男さんに伺ったお話とともにお届けします。
text by Saori Bada / photographs by Hiyori Ikai

 
千世倭樓の料理詳細はこちら

この記事を書いた人

馬田草織

編集者・ポルトガル料理研究家。料理雑誌などで編集者・ライターとして活躍するかたわら、自宅でポルトガル料理教室を主宰。Web「cakes」にてお酒に合うポルトガル料理を紹介する「ポルトガル食堂」を連載中。
近著『ムイトボン!ポルトガルを食べる旅』(産業編集センター)など著書多数。

http://badasaori.blogspot.com/

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