2022.10.05

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魚肉ペプチドは鉄の吸収や代謝を邪魔しない(魚肉ペプチドの可能性9)

魚肉ペプチドは鉄の吸収や代謝を邪魔しない(魚肉ペプチドの可能性9)

鉄(Fe)は、食事から摂取する必要のある微量元素です。全身に酸素を運ぶ赤血球は、鉄を材料として作られるヘモグロビンからできているので、鉄が不足すると貧血が起こります。鉄は様々な酵素で使われており、欠乏すると運動機能や認知機能などの低下を引き起こす可能性があります。
特に月経のある女性や妊娠中・授乳中の女性は鉄が不足しやすいので、積極的に食事から鉄を摂取する必要があります。
しかし、鉄の吸収率はあまり高くなく、吸収を阻害する成分があることも知られています。ここでは、鉄の吸収について詳しく説明します。

鉄の吸収率はあまり高くない

鉄の吸収率は食品によって異なります。植物性の食品に含まれる鉄(非ヘム鉄)は吸収されにくく、吸収率は約5%です。一方、動物性の食品に含まれる(ヘム鉄)はもう少し吸収されやすく、吸収率は15~25%ほどです。

日本人の食生活では植物性食品から鉄を摂取することが多いので、全体としては吸収率は15%程度だといわれています。

鉄の吸収を抑制する分、促進する成分

鉄は吸収率がもともと高くないことに加え、その吸収を妨げる成分もあります。それはお茶などに含まれるタンニン、野菜やきのこに多く含まれる食物繊維です。

ですから、貧血を治療する薬(鉄剤)を飲むときには、タンニンが多く含まれる飲み物(濃いお茶など)では服用しないように指導されることが多いです。

しかし、普段の食生活で食べる量ではそこまで吸収率を気にする必要はありません。鉄は体内にある程度は貯蓄することができますし、古い赤血球を壊して鉄を再利用しているからです。もし体内の鉄が不足したときには、吸収率が高まることも知られています。

そのため、鉄の吸収を心配して、食物繊維を減らす必要はありません。野菜やきのこなど、食物繊維を多く含む食品は身体に良いですし、摂取量が不足している人が多いので、ぜひ積極的に食べてください。

逆に、鉄の吸収を促進してくれる物質として、抗酸化作用で有名なビタミンCが知られています。ビタミンCと同時に摂取することで吸収されやすくなります。 鉄不足が心配な方は、意識してビタミンCを摂るようにするとよいでしょう。

魚肉ペプチドは鉄の吸収を阻害?それとも促進?

先ほど、食物繊維が鉄の吸収を抑制する成分であることをお伝えしました。食物繊維は脂質や糖質の吸収を邪魔する作用があるので、「コレステロールを下げる」「体脂肪を減らす」と謳う特定保健用食品や機能性表示食品、健康食品などによく含まれる製品です。

魚肉ペプチドには、厚生労働省が認可する特定保健用食品としてコレステロールの吸収抑制作用を表示認可された数種の食品にも匹敵するレベルの効果が期待できることも事実であるため、もしかすると鉄の吸収に影響を与える可能性も否定できません。この点を確認するために、関西大学化学生命工学部の福永健治教授らがマウスを用いた実験を行いました。

普通のエサを食べるマウス、2.5%を魚肉ペプチドに置換したエサを食べるマウス、10%を魚肉ペプチドに置換したエサを食べるマウスの3群に分けて、28日間にわたり観察しました。

 

血液検査の結果、どのマウスも血中ヘモグロビン濃度に明らかな差は出ませんでした。強いて言えば、10%を魚肉ペプチドにしたエサを食べたマウスでわずかに高い傾向がみられました(図1)。
鉄代謝 図1

 

血液中にどのくらい鉄が含まれているかを示す血清鉄飽和度については、どのマウスも正常範囲内(25~30%)でした。また、10%を魚肉ペプチドにしたエサを食べたマウスで少し低い傾向がみられました(図2)。

鉄代謝 図2

 

これらの結果から、魚肉ペプチドを摂取することで貧血につながるような鉄の吸収・代謝への影響はないと考えられます。加えて、10%を魚肉ペプチドにしたエサを食べたマウスでは、ヘモグロビン濃度が増え、血清鉄飽和率が減る傾向が見られたことから、魚肉ペプチドは鉄の代謝(利用)を促進する作用がある可能性が考えられます。

なお、この実験では1週間ごとに体重計測を行っており、10%を魚肉ペプチドにしたエサを食べたマウスは他のマウスと比較して体重増加が少ない傾向がみられました。

※当研究について詳しくは、魚肉たんぱく研究所「資料室」研究データご覧ください。
マウスの鉄代謝に及ぼす魚肉ペプチド給餌の影響

魚肉ペプチドは鉄の吸収を阻害せず、鉄の利用を促進する可能性

鉄は生きていくために必要な栄養素です。特に女性では鉄の必要量が高まる時期がありますので、意識して鉄を摂ってください。

魚肉ペプチドはコレステロール低下や体脂肪の減少などの作用が期待できる成分ですが、食物繊維を多く含む保健機能食品や健康食品とは異なり、鉄の吸収の阻害を心配せずに使えることが実験で示唆されました。それどころか、体内での鉄の代謝(利用)を促進するという作用がある可能性も見えてきました。

鉄の摂取に関するアドバイスは、こちらの記事でも詳しく取り上げていますので、参考にしていただければ幸いです。

<参考文献>
厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2020年版)
鉄を多く含む食品:慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト(KOMPAS)

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