エイタブリッシュ川村明子さんのシェアするギフト

クリエイティブ・ディレクターとして広告やアートワークを数多く手がける一方、ヴィーガンカフェ「エイタブリッシュ 」のオーナーでもある川村明子さん。デザインの力で新しい価値観を提示し、多くの共感を得ている川村さんの仕事の考え方と、親しい人に送るギフトのを聞きました。

食における制約で、クリエイティビティが輝く

とある都内のコーポラティブマンションの扉を開けると、スタイリッシュなキッチンと吹き抜けのダイニング、シックな色味のソファが心地よく配置された空間で、川村明子さんが迎えてくれました。ここは川村さんのご自宅。センスの良さは「エイタブリッシュ」の心地良い空間を彷彿とさせます。

エイタブリッシュ川村明子さん

エイタブリッシュはヴィーガンのカフェですが、川村さん自身は「何でも食べます」と公言。「20年前にパートナーの清野玲子と二人で(エイタブリッシュの前身である)カフェエイトを始めました。清野がヴィーガンだったということもあるのですが、それよりも二人ともグラフィックデザインの仕事をしていたということが大きいと思います。デザインの仕事は条件や制約の中でクリエイティブを発揮し、デザインで課題を解決するというもの。食の『厳しい制約』を課題と捉えることで、自分のクリエイティビティが発揮できるな、と面白さを感じました」。

鈴廣もまた『自然由来の素材のみで作る』という練り物における『厳しい制約』を自らの課題と捉えて、挑み続けている企業です。

「野菜という限られた・少ない材料しか使えない、ということは、逆に言えば最も多くの人に伝えられる手段なんですよね。健康上の、あるいは宗教上の理由で食の制限がある人でも、全く制限のない人でも、ヴィーガン料理ならば同じテーブルで同じものを囲むことができるでしょう? 一見、ハンディがある、マイノリティであると見えるものでも、ヴィジョンとコンセプト、デザインを加えることで一気に輝くんです」

こんな“時”だからこその 「かまぼこ」

そんな川村さんが、最近注目しているのは「かまぼこ」。

コロナ禍の中、最大の防御は自己免疫力の向上。そして良質な魚タンパク質を摂取することが自己免疫力を高めるといわれています。その良質な魚タンパク質が豊富に含まれているかまぼこが、いま注目されているのです。「かまぼこは1本につき魚6〜7匹が使われていて、すり身にすることで魚を食べるより消化率もいいと知りました。中でも鈴廣のかまぼこは、全てが自然由来というのがいいですね」

いぶき

「冷蔵庫に常備しておけば、もし今災害が起きたとしても、健康も守る非常食になるね。災害って、日常の延長に突如起きるじゃない。だからこそ、日常生活でおいしく食べていて、いざという時にも役に立つような備えをしておかなきゃならないと思う」

最近、川村さんは小児がんの子供達と家族をサポートする「Dotswill(ドッツウィル)」というプロジェクトをスタートしました。ヴィーガンでグルテンフリーのクッキー(なんと賞味期限は8年間!)を購入することで、売上の一部が小児がん患者と家族のサポートに回るという仕組みです。

川村明子さん

「防災備蓄として購入する人もいると思うんです。震災時に度々問題になるのが、避難所に賞味期限ギリギリの菓子パンしか来なくて、炭水化物過多で肥満になる子どもたちが増えるということ。災害時に、どんな形で自分や子供たちの命を守るかということに意志を持って、日常で備えられるといいと思って。ヴィーガンの人たちにはこうしたクッキー。そして魚が食べられるなら、かまぼこはいい選択だと思う」

知恵も、物も、シェアしたい

「もともと、所有したいという感覚がないんです」と川村さん。「アイデアも物も、独り占めするのではなくて、分かち合う性格です。仕事もプライベートも、出発点はシェアしたいというところからですね。常に利他の心が強いと思う。ギフトも『差し上げる』というより『シェアする』感覚に近いかな。自分がいいと思ったものは、親しい人とも分かち合いたい。友人に鈴廣の商品を送るなら、まずは定番の板かまぼこも入っている『いぶき』。この伊達巻、おやつにもいいですね」。

PARLOR 8ablish  (パーラー エイタブリッシュ)

https://www.8ablish.com/parlor

東京都港区南青山5-10-17 2F  tel 03-6805-0597  火休

text by Reiko Kakimoto / photographs by Hiyori Ikai

この記事を書いた人

柿本礼子

編集者・ライター。大学院でフランス哲学を修了後、雑誌の世界へ。現在はフリーランスで書籍から新聞、WEBで執筆・編集。ものを作る人の言葉を紡ぐのが好きです。

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