鈴廣解体新書 「鈴廣のものづくり精神」がつまった「箱根ビール」

箱根ビール」は、箱根富士丹沢連山で育まれた名水「箱根百年水」が生み出す、かまぼこに続くもうひとつの新しい食の財産。「箱根ビール」づくりは1997年に始まり、かまぼこの歴史に比べるとまだまだ若い事業ですが、すでに数々のコンペで賞を獲得している実力派です。醸造場は鈴廣の敷地内にあり、ビールづくりの作業は早朝から始まります。とくに人気なのが、「えれんなごっそCAFÉ107」で味える注ぎたての生ビール。小田原を訪ねる多くの人が楽しみにしています。そのビールづくりを率いる醸造所長の廣田覚さんに、「箱根ビール」について伺いました。

いろんなおいしさがあるという事を知る

私は「箱根ビール」の創成期から20年間、ビール事業に関わっています。そのうち約半分の10年ほどは醸造から離れ、鈴廣かまぼこの里内にあるレストラン『えれんなごっそ』で店長を務めていました。ビールをつくる現場からお客様に提供する現場に移って学んだのは“おいしさというものは、人それぞれだ”ということ。当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、レストランで食事をされる、幅広いお客様と関われたからこそ実感できた事実です。つまり、これぞおいしいビールだと言い切れるものは、実はない。その代わり、良いビールというのは確かにある。

良いビールだからこそ、多くの人においしいと感じていただけるものになり得る。だから、おいしさを目指す前に、まず良いものを目指すべきだと改めて感じました。醸造所に戻った今も、一番大切にしているテーマです。

良いビールって何だろう

では、良いビールとは何か。

これは、目下スタッフと毎日議論しながら考えているテーマです。清潔な環境で、良い麦汁と良い酵母を準備し、良いタイミングで良い発酵を促す。温度管理なども徹底しきちんと発酵させることで、香りも強すぎず、オフフレーバーのない澄んだ味わいが生まれます。そういう丁寧なつくりをひとつずつ心がけることで、自然と個性が生まれる。お客様のおいしいという評価は、そのあとからついてくるものだと感じます。

和食に合うビール

もう一つ、これはやはりレストラン店長時代に感じたことですが、どんな食事と合わせるかということを意識するのも、こと「箱根ビール」をつくるにおいては大事な要素です。ビールは洋酒ではあるけれど、箱根の水から生まれた「箱根ビール」には、その地に生まれた役割がある。つまり、土地の食文化に寄り添うものであるべきだと思います。

私たちの場合、かまぼこはもちろん、小田原の海産物や野菜などを使った和食を一番意識しています。

商品のラインナップは、きりっとしたピルスナーと、ブラウンエールの定番2種のほかに、季節限定で春めきペールエール(春)足柄ヴァイツェン(夏)こゆるぎブラウン(秋)風祭スタウト(冬)があり、そのほか爽やかなレモンビール、オレンジビール、ゆずエールなどの限定ビールを醸造していますが、そのどれもが、この地の食を意識しています。あとはお客様が好みに合わせて選んでいただく。それぞれのおいしいを「箱根ビール」の中から見つけていただければと思います。

“つくりたて”の箱根ビールを飲めるカフェ「えれんなごっそCAFÉ107」

遠くからも目を引く、ビッドなオレンジと上品なグレーの組み合わせ。鉄道好きでなくとも、近寄って思わず中を覗きたくなるレトロ可愛い車両。引退した箱根登山電車「モハ1形107号」を整備し、2019年9月、鈴廣の新たな飲食スペース「えれんなごっそCAFÉ107」としてオープンしています。かまぼこの里の中でも随一のポップさを感じる場所です。

えれんなごっそCAFE107」で、つくりたてのビールをぐびっと一杯。箱根ビールに合う、チーズや旬の野菜や魚介をのせた日替わりのかまぼこピンチョスを用意しています。

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photographs by Hiyori Ikai

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この記事を書いた人

馬田草織

編集者・ポルトガル料理研究家。料理雑誌などで編集者・ライターとして活躍するかたわら、自宅でポルトガル料理教室を主宰。Web「cakes」にてお酒に合うポルトガル料理を紹介する「ポルトガル食堂」を連載中。
近著『ムイトボン!ポルトガルを食べる旅』(産業編集センター)など著書多数。

http://badasaori.blogspot.com/

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