ツンと香り、まろやかに包み込む わさび漬けづくりを訪ねて

わさびの爽やかな辛みと、シャキシャキとした食感。
そこに酒粕の芳醇な香りが重なります。

かまぼこと合わせれば、それぞれの香りと食感が引き立ち合い、奥行きのある味わいに。
シンプルながらも奥深い味わいが、食卓にほどよいアクセントを添えてくれるのが、鈴廣オリジナルのわさび漬けです。

その味わいはどのようにつくられているのか。
今回は、その製造現場を訪ねました。

使うのは“畑わさび”

わさびには、栽培方法の違いによって「沢わさび」と「畑わさび」があります。わさびと聞いてまず連想される、摺り下ろして食べるごつごつとした根茎の部分は、主に山中の沢で地下から湧き出る湧水を利用して栽培される「沢わさび」です。
一方の畑わさびは呼び名の通り、畑で栽培するわさびで、葉っぱや根茎を食します。
鈴廣のわさび漬けはこの「畑わさび」の根茎の部分を使って作られています。

香りと食感を生み出す、わさび茎の下ごしらえ

わさび漬けづくりは、茎の下処理から始まります。
香りや食感を左右する重要な工程として、ここで「刻み」の準備が行われます。

工場には、静岡県の地元農家などから収穫されたばかりのフレッシュなわさびが届きます。
大きな茎は扱いやすい大きさに切り分け、根茎まわりの不要な部分や、紫がかった部分を一つひとつ手作業で取り除いていきます。

下処理したわさび茎は機械に投入され、2回に分けて刻まれます。細かく刻むことで、わさびの食感が均一になるよう仕上げています。
刻み終えたわさびはレーン上に流れ、その状態を人の目で確認しながら仕上げられます。粒のそろっていないものや状態の良くないものは、その場で取り除かれます。

その後、たっぷりの水で洗浄し、ざるにあげてしっかりと水気を切ります。

続いて機械で全体をかき混ぜながら塩を加え、塩をなじませることで余分な水分を引き出し、わさび茎の状態を整えていきます。
仕上がったものは、しっかりと水気を切ったうえで缶に詰めていきます。

わさびをやさしく包み込む、酒粕の存在

塩漬けにしたわさびに合わせるのは、味付けした酒粕です。
使用しているのは、山形県・出羽桜酒造の酒粕。
フルーティーで華やかな香りが特徴で、わさびの爽やかな香りと重なり合い、奥行きのある味わいを生み出します。

まず酒粕は、砂糖などの調味料を加えながら、味わいと質感を整えていきます。
さらにストレーナーに通すことでなめらかさを出し、ベースとなる酒粕を仕上げます。

その後、辛みを加えるからし粉と、塩漬けしたわさびと合わせます。
混ぜ合わせる際は、」温度やわさびの状態を確認しながら、全体のバランスを見て仕上げていきます。

製造者は「混ぜすぎると熱を持ってやわらかくなりすぎてしまうため、気温や状態を見ながら手早く仕上げています」と語ります。

均一に混ざり合うよう、数回に分けてわさびを加えながら、
木べらや機械を使い分けて丁寧かつスピーディーに仕上げていきます。
こうして仕上がったわさび漬けを容器に充填し、完成します。

昔ながらの“わさび漬けらしさ”を大切に

昔は、わさびの洗浄などもすべて手作業で行われ、明確なレシピもないまま経験を頼りに作られていました。
現在は、製造工程や配合は整えられていますが、気温や原料の状態によって含む水分量や酒粕の固さは変わるため、最後は職人の感覚がものをいいます。

また、わさび漬けのおいしさを支えているのは、たっぷりと使ったわさびと酒粕のバランスです。素材をしっかりと使いながらも、辛味・旨味・香りが調和するよう配合を整えています。わさびを多く入れれば良いというものではなく、それぞれの持ち味が引き立つよう全体のバランスを見ながら仕上げています。

製造者は「基本的に味に関しては、昔から大きく変えていないですね」と語ります。

また、酒粕をより細かいストレーナーに通し、なめらかに仕上げることも技術的には可能ですが、あえてそうはしていません。

「クリーミーな仕上がりにしようと思えばできますが、それだと“わさび漬けらしさ”が薄れてしまいます」と製造者は話します。

なめらかさに寄せすぎず、酒粕本来の重みを残すことで、わさびのシャキシャキとした食感がより際立ちます。
この“重みのある酒粕”と“軽やかなわさびの食感”の絶妙なバランスが,
厚めに切ったかまぼこのプリッとした食感に合わさり、素材それぞれの味わいを引き立てているのです。

日常の食卓に、「わさび漬け」のスパイスを

その一見シンプルな組み合わせの中には、素材選びから仕上げまで、さまざまな工夫が詰まっています。

昔ながらのわさび漬けらしさを守り続けながら、日々の気候や原料の状態に合わせて丁寧に調整していく。そうした姿勢が、変わらない味わいにつながっています。

日常の食卓に、少しの変化とスパイスを。
厚切りのかまぼこに添えられたひとさじに、長年受け継がれてきたものづくりが息づいています。

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