鈴廣営業マンが行く! 名店の「蕎麦前」をたずねて vol.4 神田猿楽町 浅野屋

江戸から続く、おそば屋さんの粋なたのしみ方「蕎麦前(そばまえ)」。おそばが出てくる前に、日本酒とともにおつまみをいただく文化です。このシリーズでは、鈴廣営業マンが各エリアのおそば屋さんを訪問。蕎麦前の良さを知る店主のみなさんにインタビューしながら、名店の逸品に触れていきます。今回は、大正時代から街の人々に愛されつづける老舗「神田猿楽町 浅野屋」(東京都千代田区)をご紹介。店主の小林伸行さん、4代目の小林由典さんにお話を伺いました。

<店舗紹介>

―― 神田猿楽町 浅野屋さんは、創業からまもなく100年を迎えると伺いました。

店主・小林伸行さん 当店は、初代・小林喜一が暖簾分けを受け、1925(大正14)年に創業しました。ちなみに、浅野屋の暖簾会である「浅和会」は30店舗近い会員を数えます。

―― 伸行さんのご子息の由典さんが、4代目としてこの暖簾を受け継がれていくのですね。

4代目・小林由典さん 昔から店を手伝っていましたし、私が継ぐのは自然な流れでした。大学を卒業した後、「一番町 吉田」(現在は閉店)という手打ちそば割烹で2年ほど修業して、この店に入りました。

伸行さん 100年近く続いている暖簾を下ろしたくはないですし、息子がやってくれるならバトンタッチするのが自分の役目だと考えていました。何をやっても商売ができた私たちの時代とは違って、いまは何か一捻りしないといけないので、息子の存在は心強いです。その一方で、今まで守ってきた味やサービス、お客さまに対する気持ちが変わってはいけないとも思います。

由典さん 当店は地域密着で、近くにいるお客さまを相手にしているのもあって、入りやすい店だと思います。そこは変えずに続けていきたいですね。

伸行さん この辺りは出版社や印刷会社なんかの企業が多いでしょう。そこに勤めていた馴染みのお客さまが、退職後に寄ってくれることもあります。うちのような「店主の顔が見える店」っていうのは、安心感があるみたいですね。

―― 伝統の味を守るために、どんなことを意識されていますか?

伸行さん かえしのベースはサバとカツオ。そばは味わいとのど越しのバランスが取れた二八で、北海道をはじめとした国産のそば粉を使用しています。
大切にしているのは、自分たちが食べて納得できるものを提供するということです。当店は揚げ物にふわっとした香りを残してくれるごま油を使います。その他の食材も、おいしくて安心して食べられるものを選んでいます。

<板わさとお酒> 鈴廣のかまぼこに、神田から生まれた銘酒「金婚」を

―― 板わさに鈴廣を選んでいただいているのはなぜでしょうか?

伸行さん 鈴廣のかまぼこは、とにかく板わさにするとおいしいんです。弾力と風味は抜群で、そのまま食べるのが一番ですね。もう15年くらい使っていますが、お客さまからも「板わさおいしいね」と褒めていただけます。

―― ありがとうございます! 蕎麦前に合う日本酒を教えていただけますか?

伸行さん 「金婚 本醸造」です。醸造元の豊島屋本店さんは、同じ猿楽町にある老舗。神田明神のお神酒 にもなっている、定番のお酒です。辛口で香りも良く、蕎麦前にぴったり。常温やお燗で飲んでいただくのがいいと思います。

<蕎麦前>塩で味わう、素材のシンプルなおいしさ「山芋の磯辺揚げ」

―― おすすめの蕎麦前は「山芋磯辺揚げ」を選んでいただきました。海苔の香ばしい風味が食欲をそそりますね。

伸行さん 山芋を海苔ではさんで天ぷらにした料理です。蕎麦前といっても特別なものを出しているわけではないのですが、シンプルなおいしさが好評です。揚げることで山芋に弾力が出て、食べごたえもありますね。天つゆをつけてもいいですが、塩で食べるのがおすすめです。

<おそば>ボリュームたっぷり ごぼうの甘さ際立つ「ごぼう天ぷら」

―― 締めのおそばは、「ごぼう天ぷら」を選んでいただきました。ごぼうも水菜もボリュームたっぷりですね!

由典さん そうですね、サービス精神というか、量は多いと思います(笑)。でも、女性でも食べ切れてしまいますし、残す方はほとんどいないですね。
ごぼうの天ぷらは、一番バランスが良い拍子木切りにしています。ごぼうの自然な甘みと、しゃきしゃきとした食感を楽しんでください。

おいしいおそばを、思いきり。昔も今も親しみやすいお店でありたい

―― 本の街というイメージの神田ですが、どんな街なんですか?

伸行さん マンションなんかも建って雰囲気は変わってきていますが、やっぱり企業が多い街ですよね。出前の需要もまだあって、オートバイで対応しています。神田で出前をしているそば屋は、もううちくらいかもしれませんが。

由典さん 神田は老舗が多くて勉強になります。知名度もあるので新しい店もどんどんできたりして刺激になりますね。カレー店の多い隣の神保町なんかにもふらっと行けますし、他業種のお店に行って、たくさんのヒントを得ています。

―― いろいろな刺激を受けて、続々と新メニューも開発されているそうですね。

由典さん 少しずつですが、新しいメニューを加えています。小エビをまとめて揚げて、卵を溶いたあんかけに乗せた「小海老天のかき玉あんかけそば」(1200円) は人気がありますね。あんがかかっているのでかき揚げの衣が溶けず、サクサクのまま食べられます。

―― 最後に、読者のみなさんにひとことお願いします。 

由典さん 当店は、そばの盛りがどうやら普通よりちょっと多いみたいなんです(笑)。丼とのセットもありますし、おいしいそばを思いきり食べて、満足していただけるお店だと思います。ぜひ気軽に訪れていただきたいですね。

蕎麦前をじっくり味わいながら過ごすひととき―。料理はもちろん、ゆっくり流れる時間やお店ごとに違う空間なども、五感を使って贅沢に楽しめます。

■今回いただいたメニュー ※価格は税込み
板わさ(650円)
金婚 本醸造(550円)
山芋磯辺揚げ(550円)
ごぼう天ぷら(950円)

■店舗情報
神田猿楽町 浅野屋
〒101-0064 東京都千代田区神田猿楽町2-7-6(JR中央・総武各駅停車 水道橋駅 東口徒歩6分)
TEL  03-3291-4327
営業時間  <月~金>11:00~20:00 <土>11:00~14:00
※新型コロナウイルス感染拡大状況により変更の場合あり
定休日    日曜・祝日

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