鈴廣営業マンが行く! 名店の「蕎麦前」をたずねて vol.3 浅野屋本店

江戸から続く、おそば屋さんの粋なたのしみ方「蕎麦前(そばまえ)」。おそばが出てくる前に、日本酒とともにおつまみをいただく文化です。このシリーズでは、鈴廣営業マンが各エリアのおそば屋さんを訪問。蕎麦前の良さを知る店主のみなさんにインタビューしながら、名店の逸品に触れていきます。今回は、麺業界で最も古いのれん会「浅和会」を率いる「浅野屋本店」(東京都千代田区)をご紹介。店主の和久井喜治郎さん、5代目の和久井喜信さんにお話を伺いました。

<店舗紹介>

―― 浅野屋本店さんは、創業150年を迎えられたそうですね。

店主 和久井喜治郎さん 当店は1872(明治5)年、初代・和久井鉄蔵が神田猿楽町で創業しました。当時のお店の大家さんが、赤穂浅野家出入りの大工の末裔ということで、名前をいただいて「浅野屋」としたようです。現在の場所に移ったのは1892(明治25)年。私が4代目、息子の喜信で5代目になります。

―― 5代にわたって暖簾を守り続けているんですね!おそばは「外二八(そとにはち)」とお聞きしました。

喜治郎さん 昔は「七三」だったんですが、30年くらい前から外二八に変えました。割合としてはそば粉が10で小麦粉が2。5kgに対して1kgだから計算もしやすいし、ふつうの二八よりもそば粉が多めに入るんです。国産のそば粉をメインに、毎日製麺しています。

―― おつゆのダシのとり方にも工夫があるんだとか。

喜治郎さん 冷たいもり汁と温かいかけ汁で、ダシのとり方を変えています。もり汁は本節(ほんぶし)に宗田節(そうだぶし)を加えますが、かけ汁は本節ではなく鯖節がメイン。本節はとても香りが良いんですが、温めるとそれがおそばの味わいに勝ってしまうんです。香りが穏やかな鯖節を使うことで、おいしく食べてもらえるように工夫しています。

―― そうした細やかな気配りで、浅野屋の味を守っているんですね。

5代目 和久井喜信さん そうですね。同じ鰹節を使ってもダシの出方が変わってしまうこともありますし、それを調整しながら味をととのえるのが難しいところです。一番大切なのは、丁寧につくるということ。イライラしていると気持ちが味に移ってしまいますから、いつでも平常心で、基本に忠実に調理しています。

<板わさとお酒> 鈴廣のかまぼこと、飲み口のいい「金婚 本醸造辛口」

―― 板わさに鈴廣を選んでいただいているのはなぜでしょうか?

喜信さん 以前は別のかまぼこでしたが、実際に食べてみると鈴廣のかまぼこって全然違う。「高いだけ」のものはたくさんあるけれど、おいしくて安心して提供できるところが決め手になりました。板わさは、そば屋ならではのおつまみ。お店に入って最初に注文するお客さまも多いし、鈴廣は評判がいいですよ。

―― ありがとうございます! 蕎麦前に合う日本酒を教えていただけますか?

喜信さん 「金婚 本醸造辛口」がいいと思います。その昔、すぐ近くの鎌倉河岸(かまくらかし)で醸造していた豊島屋本店さんのお酒です。料理に合う飲み口のいい辛口のお酒で、お燗か常温で飲むのがおすすめですね。

<蕎麦前>ふっくら千住葱がアクセント そばつゆ仕込みの「やき鳥」

―― おすすめの蕎麦前は「やき鳥」。甘さ控えめの味付けなので、お酒が進みますね!

喜信さん 「やき鳥」は、うちの定番。板わさと卵焼きに並ぶ、蕎麦前の「三種の神器」です。ねぎは、浅草の長葱問屋・葱善さんから仕入れる、甘みたっぷりの「千住葱」。鶏肉は、旨みがあるもも肉を使っています。串に刺さったふつうの焼き鳥は甘辛いタレをつけて焼きますが、うちはそばつゆで煮ているのが特徴。注文が入ったら、さっと炙って提供しています。

<おそば>素材の旨みたっぷり お酒を飲んだ後でも箸が進む「かけ」

―― 締めのおそばは、「かけ」を選んでいただきました。

喜信さん お酒を飲みながら種ものを食べた後なので、ある程度お腹も膨れますよね。締めとして食欲をそそる、箸が止まらないシンプルなものをと思って「かけ」を選びました。おつゆとそばの旨みがいちばんわかりやすいですから。冷たいほうが好みなら、「もり」を締めにするのも良いと思います。

自分の好きなように楽しめる おそばの魅力を味わってほしい

―― 神田駅のすぐ近くで営業されていますが、どんなお客さまが多いですか?

喜信さん 神田は地域のつながりが深いのもあって、近所のお客さまが多いと思います。あとは、周辺の会社に勤めているサラリーマンの方も来てくれますね。気軽にお酒を楽しんでいく人も多くて、お酒と肴一品、おそばがついた「晩酌セット」(1,180円/17時から19時まで)も人気があります。

―― 今後の抱負と、読者へのメッセージをお願いします。

喜信さん せっかく明治時代から受け継いできた暖簾だから、絶やさないようにしたいです。でも老舗だからといって、変に堅苦しい雰囲気の店にはしたくない。お客さまには、初めてでも気軽に入ってきてもらえたらと思います。メニューを見てわからないことがあったら、なんでも聞いてください。自分の好きなように楽しめる、おそばの魅力をこの店で味わってほしいですね。

蕎麦前をじっくり味わいながら過ごすひととき―。料理はもちろん、ゆっくり流れる時間やお店ごとに違う空間なども、五感を使って贅沢に楽しめます。

■今回いただいたメニュー ※価格は税込み
板わさ(650円)
金婚 本醸造辛口(一合 560円)
やき鳥(750円)
かけ(700円)

■店舗情報
浅野屋本店
〒101-0047 東京都千代田区内神田2-7-9(JR山手線・京浜東北線・中央線 神田駅下車 南口より徒歩3分)
TEL  03-3254-4351
営業時間  <月~金>11:00〜14:30LO/17:00〜21:00 LO
※新型コロナウイルス感染拡大状況により変更の場合あり
定休日    土曜、日曜、祝日

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