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タンパク質とは

タンパク質の機能や種類、ペプチド・アミノ酸との違いなど詳しく解説 タンパク質が健康維持に欠かせない栄養素のひとつであることは多くの人が知っていると思います。一方で、実際に体内でタンパク質がどのように機能しているのかを理解している人は少ないのではないでしょうか。ここでは、タンパク質の性質や働きについて解説します。

タンパク質とは

 

タンパク質

人体の組成は15-20%がタンパク質であり、水分を除いた成分の約半分がタンパク質で占められています。人間の設計図とも言われるDNAはタンパク質の設計図であることからも、体を作るために一番大切な栄養素はタンパク質である、と言っても過言ではないのではないでしょうか。食事から摂取されたタンパク質は体内でアミノ酸にまで分解され、筋肉や臓器、皮膚、骨、毛髪、ホルモンや抗体などの材料として使われます。例えば、骨はカルシウムのイメージが強いかもしれませんが、タンパク質の足場がなければカルシウムが定着することが出来ないので、まずはタンパク質で基礎的な構造が作られることが強い骨を作るためには重要です。

タンパク質以外にも体に良い成分は多く存在していますが、それらの良い効果を最大限に発揮するためにも、まずはタンパク質を摂取して、しっかりと体の基礎を作ることが健康維持につながると考えられます。

タンパク質はカラダを作り、エネルギーも生み出す

体づくりの組成に欠かせない栄養素であるタンパク質は、肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などの食品に多く含まれます。炭水化物・脂質と共に人間の体に必要な栄養素の中でもエネルギー(カロリー)源となる栄養素のことを指す「エネルギー産生栄養素」(旧:三大栄養素)の1つに数えられます。最近ではタンパク質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)の頭文字をとったPFCバランスという考え方も注目され、理想のバランスはPが15%(13-20%)、Fが 25%(20-30%)、Cが 60%(50-65%)と言われています。食事ではカロリーに加えて、栄養の摂取バランスも大切にすることが健康維持につながりそうです。

タンパク質は日々作り替えられている〜動的平衡〜

体内のタンパク質は、古くなったものから新しいものへと絶えず入れ替わっています。毎日行われるタンパク質の合成のうち、約55%は体内に貯蔵されているアミノ酸から、残りの45%は食事から摂取した新しいタンパク質が利用されています。

【動的平衡とは】

体内のタンパク質が合成と分解を繰り返している状態を動的平衡といいます。一見同じ状態に見えても常に変化し続け、人体の恒常性を保っています。つまり、タンパク質の動的平衡は生命維持活動であり、日々の健康を保つためにも、十分な量のタンパク質を毎日摂取することが必要だということです。

タンパク質の「質」はアミノ酸スコアで決まる

アミノ酸スコアとは、食品に含まれるタンパク質に必須アミノ酸がどんなバランスで含まれているかを示す数値です。アミノ酸スコアが100に近いほど良質なタンパク質とされています。必須アミノ酸は体内で作り出すことができませんが、体内でタンパク質を合成するためには欠かせない栄養素です。

アミノ酸の種類

タンパク質は20種類のアミノ酸から構成されます。
20種類のアミノ酸は、体内で合成できない、あるいは十分な量が合成されない9種類の必須アミノ酸と体内で合成される11種類の非必須アミノ酸にわかれます。20種類のアミノ酸の結合の仕方で、約10万種類のタンパク質に分類することができます。
体内で合成できない必須アミノ酸は食事から摂取しなければいけません。

アミノ酸の桶理論

必須アミノ酸はいずれか1つでも不足しているものがあるとタンパク質は十分に合成されません。この必須アミノ酸のバランスについては、よく桶に例えられます。各必須アミノ酸が1枚1枚の桶の板だとすると、不足=板が短いものがあれば、いくら他の板が長くても桶の中に溜まる水(=生成されるタンパク質)は十分な量にならないのです。

動物性タンパク質と植物性タンパク質

食事から摂取するタンパク質には大きく分けて2種類あります。動物由来の食品に含まれる動物性タンパク質と、植物由来の食品に含まれる植物性タンパク質です。動物性タンパク質と植物性タンパク質の大きな違いは、必須アミノ酸のバランスにあります(アミノ酸スコア)。タンパク質を構成するアミノ酸のなかで、体内で合成できない必須アミノ酸9種のバランスを「アミノ酸スコア」で数値化します。この数値が高いほどタンパク質を十分に生成でき良質なタンパク質とされています。アミノ酸スコア100の食品は植物性よりも動物性タンパク質に多いです。

タンパク質の1日の必要摂取量と計算式

毎日、新しいタンパク質を必要としている体にとって、1日にどれくらいのタンパク質量が必要なのか、以下の計算式で知ることができます。
1日に必要なタンパク質量(g)=自分の体重(kg)×体重1kgあたりのタンパク質必要摂取量(g)

体重1kgあたりのタンパク質必要量(※個人の運動量が目安になります。)

活発に活動していない人 0.8g
スポーツ愛好者
(週に4~5回、30分のトレーニング)
0.8〜1.1g
ウエートコントロール期間 1.4~1.8g

(※樋口満編著『新版コンディショニングのスポーツ栄養学』の数値より抜粋)

大まかな目安としては、普段から適度に運動している人の場合は、体重1kgあたり1g程度のタンパク質が必要だと考えるとよいでしょう。

吸収率が違うから摂取量も違う

動物性タンパク質と植物性タンパク質は同じ量を摂取したとしても、体内での吸収率が異なります。

【吸収率】
動物性タンパク質…90%以上
植物性タンパク質…70〜80%

例えば、納豆1パックのタンパク質量は12.4gですが、植物性のため体内に吸収されるのは9g前後です。タンパク質は動物性・植物性の吸収率の違いも考慮した量を摂取することで、より効率的に摂取できます。

タンパク質の機能

体の生命維持に欠かせない栄養素であるタンパク質は、体内での働きで大きく分けて2つに分類できます。構造タンパク質と機能タンパク質です。
構造タンパク質は、その名の通り、筋肉や臓器、皮膚、骨、毛髪など人体の構造にかかわるタンパク質です。機能タンパク質は、体内で分泌されるホルモンや酵素、抗体などにかかわるタンパク質です。

構造タンパク質の働き

構造タンパク質の働きは、主に体の構造にかかわっています。代表的なものはコラーゲンやケラチンです。

  • コラーゲン:骨、軟骨、腱、皮膚(結合組織の主成分)を構成する
  • ケラチン:毛、爪などを構成する
  • 細胞構成タンパク質:筋肉、皮膚、内蔵などを構成する
  • 核タンパク質:DNAなどの材料

構造タンパク質の働きが不足すると、髪や肌だけでなく、内蔵や血管の衰えにつながります。

機能タンパク質の働き

機能タンパク質の働きは、消化したり、酸素を運搬したり、免疫機能を司るなど、体内での化学反応関わっています。呼び方はさまざまですが、主に次のような働きがあります。

酵素タンパク質、輸送タンパク質、貯蔵タンパク質、調節タンパク質、収縮タンパク質、防御タンパク質、情報伝達タンパク質

機能タンパク質の働きが不足すると、貧血になったり、細菌やウィルスに感染しやすくなったり、光や匂い、味などの感覚的な部分の衰えにつながります。

タンパク質・ペプチド・アミノ酸の違い

タンパク質と一緒によく耳にするペプチドとアミノ酸。3つの違いについて解説します。

タンパク質もペプチドもアミノ酸が結合したもの

タンパク質もペプチドも、元を辿ればいくつものアミノ酸が結合したものになります。たった20種類のアミノ酸の組み合わせと結合の配列によって、人の体を組成する約10万種類のタンパク質が構成されます。
結合するアミノ酸の数で、タンパク質かペプチドかが変わります。
一般的にアミノ酸が2〜数十個つながったものをペプチド、それ以上結合したものをタンパク質と呼ぶこともありますが、単独で安定した立体構造を持つものがタンパク質という定義では、産業総合研究所が報告したアミノ酸10個からなる『シニョリン』という世界最小のタンパク質がよく知られています。

吸収速度の違い

タンパク質、ペプチド、アミノ酸は、結合した個数の違いから消化吸収の速度に違いがあります。結合した個数の少ないものの方が、当然、消化吸収が早くなります。そのため、特に運動後などタンパク質のすみやかな補給を考える場合は、タンパク質の食品を摂取するよりも、ペプチドやアミノ酸の状態になっているものを選ぶことがポイントになります。

タンパク質を上手に摂取するためのポイント

普段の食生活では、少しの工夫でタンパク質を上手に摂取できるかが変わります。

食材を組み合わせる

食事は単品料理よりも献立全体を意識すると、複数の食材が組み合わさり、タンパク質の吸収率を上げたり、十分な量の合成につなげたりすることができます。植物性タンパク質が含まれる白米はアミノ酸スコアが低いですが、動物性タンパク質のおかずを添えれば必須アミノ酸のバランスが改善されます。全体の栄養価も上げることができます。

タンパク質が不足した時の体への影響

タンパク質の摂取が不足すると、体内の組成に関わります。髪や肌、血管にダメージが出てきたり、神経伝達やホルモン分泌にも影響が出たりするため、集中力の低下やストレスにつながります。エネルギー産生栄養素であるタンパク質が不足すれば、エネルギー不足の体はエネルギーをつくるために筋肉を分解し始めます。

タンパク質を摂りすぎた場合の影響

人体に必要不可欠な栄養素であるタンパク質ですが、摂りすぎは悪影響もあります。余分なものは体外に出す必要があり、その分腎臓に負担がかかります。食事の総カロリーも多くなり、肥満につながりやすくなります。タンパク質の摂りすぎが、かえって健康に害を及ぼすことになりかねないよう気をつけましょう。

まとめ

タンパク質は、人体の生命維持に欠かせない栄養素のひとつです。常に体内で古いものから新しいものへと入れ替わっています。この入れ替わりが健康維持のための活動そのものです。新しいタンパク質の合成のために上手にタンパク質を摂取しましょう。

魚肉たんぱく研究所は、お魚たんぱくで世界を健やかにすることをテーマに魚肉たんぱくの魅力を発信中です。魚肉たんぱくの知識を、ぜひ健康生活に役立ててください。

この記事を書いた人
魚肉たんぱく研究所 所長 博士(農学) 植木暢彦(うえき・のぶひこ)

魚肉たんぱく研究所 所長 博士(農学) 植木暢彦(うえき・のぶひこ)

東京大学大学院農学生命科学研究科 水圏生物科学専攻 博士課程修了
魚貯蔵中の脂質過酸化抑制、マグロの変色メカニズム解明、ペプチドのシグナル伝達経路解明などの研究を経て、魚の基礎研究を続けたいと魚肉たんぱく研究所へ移籍。
現在は、伝統的職人技の原理解明、未利用資源の有効活用、魚肉タンパク質を用いた新規シーズ開発をテーマに研究を行っている。好きなかまぼこの食べ方は、オリーブオイルにネギ。または小田原っ子の丸かじり。

魚肉たんぱく基礎講座

  • 魚肉たんぱくFISH PROTEIN
    魚肉タンパク質はその性質ごとに3つに分類されます。哺乳類や植物のタンパク質よりも消化性が高いことも特徴で、最近では数多くの健康機能性も明らかにされてきています。
  • タンパク質PROTEIN
    人の体の約20%はタンパク質でできていて、20種類のアミノ酸から構成されます。タンパク質はエネルギー産生栄養素のひとつで健康に欠かせない栄養素です。正しい知識を身につけて上手にタンパク質を摂取することが大切です。

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