HOME ヒト 『音楽』というブレないアイデンティティが多くの人を魅了するゲストハウスのオーナー。

『音楽』というブレないアイデンティティが多くの人を魅了するゲストハウスのオーナー。

「Tipy_records_inn」代表 コアゼ ユウスケさんに聴く

2023.07.24
『音楽』というブレないアイデンティティが多くの人を魅了するゲストハウスのオーナー。

小田原の空き部屋をリノベーションし、ベストハウスを運営するコアゼユウスケさん。レコードやCDを持参すると、宿泊代からキャッシュバックされるという独自のディスカウントシステムを展開し、世界中の音楽を集める彼は、思いついたことや楽しそうだと思ったことはすぐに実行するバイタリティの高さが魅力のひとつ。そんなコアゼさんに話を伺った。

いまに至るまでの道のり

「Tipyのはじまりは、私のアイデンティティである『音楽』からです」

「Tipy_records_innは音楽色の強いゲストハウスですが、音楽とゲストハウスを組み合わせるきっかけとなったのは、学生時代までさかのぼります。

まず音楽との出会いは私が中学2年生の頃。人間関係が原因で学校には行かない時期があって、今は無き小田原のタワーレコードに通い詰めていたんです。そこで出会った楽曲の数々がきっかけでバンド活動に強いあこがれを抱くようになりました。

バンドを組み、オリジナルの楽曲をつくっては全国をまわり、ライブでCDを販売する日々を20歳まで続けましたね。本当に好きなことだから続けられたんだと思います。

とはいっても私も結婚をきっかけに手に職をつけようと、小田原でおしぼりの配送の仕事や、バスの運転手の仕事を数年がんばっていたのですが、どうしてもバンド活動へのあこがれは消えることがなかったんです。

この頃から副業で部屋を貸す仕事をやりはじめたのですが、この時におしぼりの配送の知識やバスの運転手の経験が活かされていることに気が付いたんです。というのもおしぼりの配送で知った地元の美味しいごはん屋や、バスの運転手をやって知った小田原の土地の魅力は、遠方から部屋を借りに来たお客さんにとってはとても有益な情報だったんです。

そんな経緯があって音楽とゲストハウスの両立を目指して設立したのが、Tipyなんですよ」

客観的に見て、自身はどんなヒトなのか?

「思いついてから実行するまでがとにかく早いです。
『さあ、やっちゃおう』が私のベースにあるからでしょうね」

「これまで色々とイベントや企画をしてきましたが、そのどれにも共通することは、思った時にはすでに動いてしまっている、というものがあります。

たとえば『ティピーのおつかい』という企画では、小田原ではテイクアウトサービスは充実しているのに、配達サービスはそこまで充実していないなと思い、人もバイクもあるからTipyでやろうと決めてわずか2日で配達のサービスを開始しましたね(笑)」

ゲストハウスのオーナーとして最も大事にしていること

「ただ部屋を貸しておしまい。ではなく、ここに関わる誰もが輝ける『ライブハウス』のような場所を心がけています」

「世の中の人間をふたつの軸に分けたとき、何かを行うのを『手伝う人』と『思いつく人』がいたとするなら、私は圧倒的に後者かもしれません。けれど実は最近は、『手伝う人』にならなければならないな、と思うようになっているんです。『手伝う人』ってなにかというと、私が色々な人に『環境』を提供してあげることだと考えているんです。ここでいう環境とは、Tipyに来る誰もが『自分自身の意見を言える場所』のことだと思うんです。

それはつまり、『ライブのステージ』と同じなんですよ。ライブステージって、バンドが自分たちでつくった楽曲を披露する場所なわけです。つまりこれまで自分たちでゼロからつくったものを公に発表できる場所で、自分の思いやアイデンティティを叫べる機会があるんですよね。

自分の興味や好奇心がどこに向いているのかを知らないまま歩んできた人って少なくはないと思っていて、そんな人たちもTipyに来れば、まるでライブステージに立っているような体験を通じて、自分らしく輝けるような機会を得ることができる。そんな環境を提供できればなと思いながら運営しています」

これからの展望

「ここに来る人たちがステージに立てるように『手伝う人』になりたいです」

「先ほどもお話したように、今後は小田原に訪れる人々を「手伝う人」になりたいんです。というのも最近、『ティピーの小田原お試し移住』という2泊3日で小田原に仮移住体験のできるTipyの企画に、大学生のお客様が参加されたことがあったんです。

その際に聞いたことは、リモートでの授業が増え、場所や移動時間の制限がなくなった半面、外に出て夢中になれる何かに出会う機会や場所がなくなってしまっているという現状でした。そこで地域の一員として地域の課題解決や新規事業などを、大学生らが主体となって動かしていく『ティピーのローカルキャンパス』という企画をはじめたんです。

この企画の合言葉はやっぱり『さぁ、やっちゃおう。』で、大事なことは『彼らが自ら動いて実践する』ということなんです。その過程の中で、仲間や新しい価値観と出会うことで、新しい自分を見つけていってほしいんです。

だからこそ私は、今度は『手伝う人』になっていく必要があると思っているんです。そしてこれらはすべて、小田原に住む地域のみなさんの協力があって初めて成立していると実感しています」

ヒトに伝えたい小田原の魅力

「全部あること、そしてそれらを全部『使っていいこと』だと思います」

「ここに訪れる人たちが口をそろえて言うことは、『海もあって、山もあって、川もある』というように全部揃っているということですね。

そして私が感じるのは『それら全部つかっていいよ』という、地域のみなさんの温かさです。それは『ティピーのローカルキャンパス』を行っているときもそうでしたが、どのお店も、そして市役所の方々もすごく協力的で、それでいてみんなが一緒に楽しんでいる。そんなヒトの温かさがやっぱり小田原の魅力なのかなって思います。

新しいことってどうしても最初は敬遠されがちですが、そんな閉鎖的な雰囲気も段々となくなってきていると感じるので、これからも地域の皆さんと一緒に色々やっちゃえればと思います」

まとめ

これまでやってこなかったことを新しく始めるのはとても勇気のいることかもしれない。けれどコアゼさんとの会話は、自分もライブを盛り上げる人生の主人公なんだと勇気づけられる。Tipyに行けば、新しい自分に出会えるかもしれない。
みなさんも一緒に「さあ、やっちゃおう」。