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隠れた観光案内所ともいえる街の喫茶店。

ケントスコーヒー

2022.08.25
隠れた観光案内所ともいえる街の喫茶店。

小田原城を抜けた先、かまぼこ通りの一角に「ケントスコーヒー」はある。海へ歩いて1分程度の距離にあるその喫茶店は、自家焙煎のコーヒーを提供するほかに、小田原の歴史や魅力を伝える観光案内所としての機能を持つ。店内からこぼれるBGMに誘われるがままに、歩みを進めた。

波の音が微かに聞こえるそのバショには40年の来歴が息づいている

ケントスコーヒーは小田原駅から歩いて行ける海岸「御幸の浜」の入り口にお店を構え、自家焙煎のコーヒーを提供する喫茶店。オーナーの平井丈夫さんはこの道40年のベテランだ。海から程ない距離にあるため、外のテラス席からは微かに波の音が聞こえてくる。

店内へ歩みを進めると、水出しコーヒー機やサイフォン、レトロさを感じるスピーカーに真空アンプなど、オーナーの愛用品が随所に見られる。

店内では水出しのアイスコーヒーをはじめとした自家焙煎のコーヒーメニュー各種の他、ホットサンドやエビピラフ、ナポリタンスパゲッティなどの軽食も取り揃えている。ジャズが流れる空間でゆったりとしたブレイクタイムを過ごすにはおすすめだ。

ケントスコーヒー店内

長い喫茶店人生のすべてが詰まったコーヒーとジャズ

ケントスコーヒーは平井さんの40年の喫茶店人生そのもの。今回はとくに平井さんが歩いてきた道のりを感じていただける「コーヒー」と「ジャズ」について紹介したい。

自家焙煎でつくられるブレンドコーヒーの配合は、平井さんが1977年に仲間と一緒に開業した喫茶店からのレシピを引き継いでいるという。ボディ感と深みあるコクに程よい酸味、そして店内の空間いっぱいに広がる豊かな香りは、これまでの喫茶店歴を感じさせる一杯だ。イートインはもちろん、テイクアウトもできるので、海辺までコーヒー片手に散策できるのはうれしい。

そしてジャズではアメリカのピアニスト「ビル・エヴァンス」の演奏をかけ続けている。大学時代の隣人にすすめられジャズに魅了された平井さんは、今まで営んできたお店でかならず流してきたという。

1950年代~1970年ごろ活躍したビル・エヴァンスはモダンジャズをけん引し、ジャズに詳しくなくともすっと心地よくなる上品な弾き方が特徴だ。

奇をてらった曲を流さず、いつの時代も誰でも気持ちよくなれる曲選び。これこそが平井さんのおもてなしなのだろう。コーヒーの香りが立ちこめ、ビルエヴァンスの美しい演奏が静かに流れる店内は、心安らぐいやしの空間だ。

ケントスコーヒーとジャズ

その喫茶店の入り口は”小田原”への入り口でもある

ケントスコーヒーは喫茶店としての側面のほかに、小田原の魅力を伝えるコミュニティーカフェとしての側面がある。

平井さんが運営している「てくてく小田原まち歩き」は、小田原の市街を散策する企画だ。小田原の外から来る観光客や移住を考えている方に向けて、小田原の歴史や魅力に触れながら、地元住民ならではの視点にもとづいたコースで情報を発信し、お客様とコミュニケーションを取り合う。

ケントスコーヒーでも小田原に関するいろいろな会話ができる。おいしいケーキ屋や和菓子屋さん、面白い作家や陶芸家の工房や鰹節屋さんなど、ケントスコーヒーは地元民にとっても、観光客にとっても小田原への理解を深めることのできる喫茶店なのだ。

その喫茶店の入り口は”小田原”への入り口

海へつながるその道で小田原の魅力を発信し続ける

ケントスコーヒーに臨む御幸の浜は視界いっぱいに広がる海の景色が非常に美しい。平井さんはこの海の美しさを伝えるため、ケントスコーヒーで今日も活動を続けている。

「御幸」という名称は、1873年に明治天皇と皇后が浜で行われていた漁夫の地引き網漁をご覧になったことがきっかけで付いたもの。天皇や上皇が外出や旅行されることを「御幸」と呼ぶことに由来しており、現在においても多くの人々が訪れる観光スポットだ。

「小田原の良さは海山川と色々ありますが、結局はヒトの良さが一番ですね」と話す平井さんの優しい雰囲気は、ケントスコーヒーで過ごす居心地の良い時間にそのまま反映されているように思われる。平井さんとの会話を楽しんだ後はコーヒー片手に御幸の浜に訪れるのもおすすめだ。

ケントスコーヒーと海

ケントスコーヒー

〒250-0012 神奈川県小田原市本町3丁目4−21
電話:0465-25-4491
営業時間:11:00~19:00
定休日:不定期のため、HP等をご確認ください。

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