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クラフトでもありアートでもある。「伝統」をまとった現代のプロダクト。

OTA MOKKOの「寄木細工」

2022.08.26
クラフトでもありアートでもある。「伝統」をまとった現代のプロダクト。

江戸時代から脈々と受け継がれてきた箱根寄木細工。現在、小田原で活動する寄木細工職人の中でも、ひときわ異彩をはなつ職人がいる。それが2021年にスタートした「OTA MOKKO」の代表、太田憲さんだ。彼のつくるプロダクトの魅力を紹介する。

「過去」ではなく「いま」を生きる寄木細工

2012年からスタートした「OTA MOKKO」でつくられるプロダクトは、この地で代々受け継がれてきた技術を使いながらも、いわゆる「伝統工芸品」と言い切るには少々の語弊がある。というのも、「時にクラフト。時にアート。その両方でありたい」と太田さん自身が語るように、技法こそ寄木でありながらもプロダクト自体は、道具として日々の生活に生きるものから、装飾品として現代的な空間を彩るためのものまで様々なものをつくり出し、そのいずれもの独創性が高いからだ。

端的に属人的な言い方をするならば、太田さんの生み出す作品は「オシャレ」である。この表現こそチープで語弊があるのかもしれない。ただ、ここで伝えたい本質はその言葉が適切であるか否かではない。そう連想されるイメージ対象が、伝統工芸品としての系譜を継ぐプロダクトであるということが重要なのだ。数百年つづく歴史を背負ったモノを見て、そういった感情を抱けることが各々の人生に何回あるだろうか。その中の貴重な1回を体験した筆者の思いが読者に伝わることを願う。

色彩は30種類を超える木材が生み出す

寄木細工に使用される色とりどりの木材は、塗装されたものではなく「木材」本来の色を発していることは意外と知られていない事実だ。そして、それを知った際の驚きこそが寄木細工の最大の魅力だと言っても過言ではない。使用する木材の色だけでなく素材感や特性などをすべて見極めた上でうくられるパターンが、寄木細工が21世紀においても人々を魅了する大いなる理由なのかもしれない。

さて、「OTA MOKKO」のプロダクトに話を戻そう。太田さんは常に国内外から集めた木材を30種類以上保有しているという。その理由はシンプルだ。私たちが道の出会いを本能的に求めるのと同様、「いろんな木を知りたい。そして、一緒にまだ見ぬ作品をつくりたい」からなのだという。

当然、使用する木材が増えれば、柄を切り出すにあたってベストなバショを探す難易度も上がり、完成に至るまでの時間も増える。しかし、そこにこそ職人の技術力と忍耐力を投下すべきだと、太田さんは考える。

いまも日々増える木材を、まるで多色の色鉛筆をあたえられた少年のように無邪気に操る彼を見て、小田原に息づく伝統文化の奥深さを改めて知らされた。

「アート」としての可能性

「OTA MOKKO」が思い描く未来には、先述したように寄木細工を「クラフト」としてだけでなく「アート」としても成立させたいというビジョンがある。いまはまだ、そこへの道筋を模索中だと言うが、それに近いプロトタイプは日々生まれている。きっと、小田原市板橋にある工房兼ショップに訪れれば、工房の買った済みにひっそりとたたずむそれらに出会えるはずだ。

「伝統工芸」としての一端を担う「OTA MOKKO」が、寄木細工を現代の文化として進化させていく様をリアルタイムで見ることができる我々は幸運だ。

地域単位でみた寄木の未来を見据えた製作活動

「OTA MOKKO」のプロダクトの未来を論じるにあたり、それ単体の話だけでは本質は見えてこない。なぜならば、この地で寄木細工を継承する職人たちの横のつながりは深く、彼らは各々だけではなく「箱根寄木細工」が文化としてこれからどうあるべきなのか、日々会話を続けているからだ。

太田さんは言う。

「本流の伝統を守ってくれる先輩達が、僕らの世代に寄木細工の可能性を探るモチベーションを与えてくれるからこそ、新たなことに挑戦できるんです」と。

県外で育ちながらも、寄木に魅せられこの地に移住してきた太田産だからこそ、余計にその使命を強く感じるのかもしれない。それを象徴するかのような彼の言葉を最後に紹介しよう。

「僕にしかできないこと。それを追求することが恩返しなのかなって」

太田木工 OTA MOKKO

〒250-0034
神奈川県小田原市板橋179-5
電話:0465-22-1778
営業時間:10:30~16:00
定休日:不定休(※移転のためお休み中、今秋再開予定)
    ※詳しい情報は下記HPよりお問い合わせください

https://ota-mokko.com/