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自ら育てた小麦で作る「毎日食べたい」バターロール

「麦焼処 麦踏」のパン

2022.11.07
自ら育てた小麦で作る「毎日食べたい」バターロール

「麦焼処 麦踏」は山の中腹にぽつんとある小さなパン屋。けれども毎日14時には完売してしまう人気店である。常時20種類以上のパンを取り扱うが、今回は一番人気の「バターロール」を紹介する。毎日食べても食べ飽きないパンを目指すオーナーがつくり出す商品のおいしさの秘訣とは。

オープンしてわずか数年
人気の理由は「選び抜かれた素材」とその「技術」

2018年1月にオープンした「麦焼処 麦踏」は、連日予約のパンで棚が埋まり、10時の開店から客が絶えず訪れる大人気のパン屋である。

わずか数年でここまで人気店となったのは、噛めば噛むほど小麦の味を感じることができるパンにある。一度食べたら、ついつい食べ続けてしまって、どうしてもまた買いに行きたくなってしまう。

オーナーの宮下純一さんにきくと、「素材選び」と「技術」が普通のパン職人とは大きく違うようだ。麦踏の看板商品であるバターロールにそれがつまっている。

自ら育てる南足柄産の『きんたろう小麦』の味を
名刺代わりのバターロール

「麦踏」で一番人気のバターロール。宮下さんが「私は名刺代わりに、このパンを渡すこともあるんです。麦踏を知る入口になってくれたらいいなと思っています」と話すほど。

そのバターロールに使うのは、パン職人達が自ら栽培する南足柄産の「きんたろう小麦」というブランド小麦。味が濃く、おいしい雑味がパンには魅力的な品種だという。

収穫した小麦は男鹿石の石臼でゆっくりと挽かれ小麦粉にかわる。低速で製粉することで熱の発生をおさえ、小麦特有の極上の香りを放つ良い素材に仕上がる。1台の石臼から1時間に2キロしか取れないというが、この貴重な小麦粉を惜しみなく使うからこそ麦踏のバターロールが生まれるのだろう。

「余計なものはいれないし、余計なことはしない」のが麦踏のモットー。そのため、宮下さんの素材選びへの想いは揺るがない。自ら農家資格を持ち、畑で育てた小麦でパンをつくるほどなのだ。「現在の小麦は買いたたかれてしまっている。だからパン屋が農家の大変さを第三者に伝えていくことで小麦の価値を上げられる」と宮下さんは考え、自ら農家を始め、その小麦を使ったパンづくりを追及しているのだそう。

その素材を活かす技術も宮下さんにはある。実は宮下さんは、和菓子職人、ケーキ職人を経てパンの道に進んだ異色の経歴を持つ。これが麦踏のバターロールを他とは違う逸品に仕上げることにつながっている。例えば、和菓子屋で培った包餡の技術。包み方は見た目の良さはもちろん、生地のつなぎ目の薄さや食感に絶妙に関係してくる。ケーキづくりでは生地の空気の入れ方を徹底的に習得できたという。

目指すものは「こたつのみかん」

意外にもロールパンの小麦の配合は細かくは気にしていないのだそう。そこには、宮下さんの「食べ飽きないパン」への追及心があった。安定しているパンは、それもまた飽きる要素になってしまう。「あそこのパンおいしいよね、そして時々すごくおいしい時あるよね」となることが理想なんだそう。

宮下さんは麦踏のパンを「こたつのみかん」のようなものにしていきたいのだそう。「こたつのみかん」は、飽きずについつい手が伸びてしまうもの。そんなものをつくり出していきたいのだという。

これからも「街のパン屋」であり続ける

麦踏の店舗は、豊臣秀吉が小田原討伐の際に千利休に茶室を結ばせた「天正庵」の跡地に立てられた古民家を改修したもの。ここでパン屋ができたのは、ほどよいお節介してくれる小田原の人と人との縁が繋がったからだという。

TVや雑誌に取り上げられる機会が多くなり、観光客がたくさん訪れるようになった麦踏だが、ベースとしてあるのは「街のパン屋」だという想い。そこにあるのは、普段の日常で食べるパンをつくりたい、地元に還元していきたい、という願いであった。

パンは同じ配合、同じ環境でつくったとしても、つくる人が変われば同じものにはならない。この地でパンづくりに真っすぐ向き合い続ける宮下さんのつくり出すパンをあなたも食べてみてほしい。

麦焼処 麦踏

〒250-0025
神奈川県小田原市江の浦307 ※天正庵跡
電話:0465-43-7922
営業時間:10:00~19:00(売り切れ次第閉店)
定休日:火曜日・水曜日(祝日は営業しています)

https://kataura-mugifumi.com/