魚肉ペプチドの摂取によって犬の食いつきが向上し、毛並みの改善およびストレスの軽減につながる可能性がある
背景および目的
魚肉タンパク質は大豆タンパク質や乳タンパク質よりペプシンに消化されやすく、その酵素分解産物である魚肉ペプチドは、様々な健康機能性を示すことから健康増進用の素材として注目されている。特に、魚肉ペプチドは抗酸化活性の高いジペプチドが含有されておりヒトに対して疲労感を軽減する効果が認められている。
ペットの生活の質(QOL)向上を目的とした機能性ペットフードの市場は拡大傾向にあり、新規原料素材の開発が期待されている。機能性ペットフードとは基本的な栄養素に加えて、健康上の利点(消化、嗜好、被毛の改善等)を提供するように設計されたペット食品であり、魚肉ペプチドがこれらの素材として活用できる可能性がある。
しかし、ペットへの効果に主軸を置いた研究は十分に進んでおらず、魚肉ペプチドが犬の健康機能にもたらす効果に関しては明らかにされていない。そこで本研究では、魚肉ペプチドが犬の嗜好性や体調に及ぼす影響を明らかにするために、魚肉ペプチドを犬に給餌し、食いつき、毛並み、ストレスレベルへの影響を検討した。
方法
イヌ20頭(各群10頭ずつ)を対象とし、イヌの体重10 kgあたり魚肉ペプチド8 gを毎日朝夕2回に分けて市販の配合飼料に添加した。試験給餌期間は30日とした。食いつきや毛並みの変化はVisual Analogue Scale(VAS)法で評価し、自然脱毛した被毛の外観を走査型電子顕微鏡で観察した。ストレスレベルは自然脱毛した被毛中のコルチゾール含量を指標とした。
結果




イヌの食いつきは魚肉ペプチドを摂取したことで有意に向上した(図1)。毛並みのVASスコアも魚肉ペプチドを摂取したことで上昇する傾向にあり、被毛表面の損傷も改善する傾向が認められた(図2-1.2-2)。被毛中のコルチゾール含量は対照群と比べて魚肉ペプチド摂取によって有意に低下し、ストレス低減効果が示唆された(図3)。
まとめ
本研究結果から魚肉ペプチドは、犬の食いつき向上による毛並み改善、ストレス軽減への効果が示唆された。
したがって、ヒトへ向けた機能性素材としての用途のみならず、機能性ペットフード素材としての活用が期待される。
令和7年日本水産学会秋季大会にて発表
「魚由来タンパク質源の給餌によるイヌの食いつきおよび被毛外観の向上、被毛コルチゾール含量の低下について」
試験協力・データ提供:特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン