ほんとは内緒にしたい、実はおいしい魚たち

ぷちかま記者:

こんにちは!ぷちかま記者です。かまぼこ界のスクープを追って、かまぼコラム、始まりました。第4回のテーマは、あまり聞き慣れない「未利用魚」についてです。

かまぼこカリブ:

未利用魚は、市場にあまり出回らない魚のことです。高級とかレアとかいうわけではなく、値段ねだんがつきにくいから、というのがその理由です。

記者:

お寿司のネタにならない魚たちですね。でもれてしまった場合は、どうしてきたのでしょう?

カリブ:

主には、漁師さんたちや地域ちいきの方が消費してきました。しかし、ただてられてしまうことも少なくありません。

記者:

もったいないですね……。そもそも、どうして値段ねだんがつきにくいのですか?

カリブ:

いろいろな要因があります。例えば、顔が悪いから。

記者:

え、魚の顔ですか!?

カリブ:

なんとなく気持ち悪いから、という理由で食べられてこなかった魚というのは、実はたくさんいます。その一つが、トウジンです。

記者:

とんがってますね。

カリブ:

漁でがるときに口から内臓ないぞうが出ていたり、鼻がとがっているので人にさったりと、なかなかインパクトは強いです。でも、お刺身さしみでもムニエルでも、どう食べても美味しいんです。

魚肉博士:

実は先日、このトウジンで、実験的にかまぼこを作ってみました。

記者:

おお、お味のほどは?

博士:

顔に似合わず白くきれいで、ぷりぷりのかまぼこができました!しかし未知の部分も多く、まだまだ研究の余地はありそうです。

記者:

未利用魚とかまぼこは、かなり可能性がありそうですね。

カリブ:

そうですね。他にも見た目が理由であまり食べられていない魚がいます。例えば、カゴカキダイ。

記者:

派手はでなお色ですね。

カリブ:

漁港内にもいるくらいなのでりやすいのですが、いかんせん、黒と黄色の警告色けいこくしょくなんです。スズメバチや、遮断機しゃだんきの色ですよね。ちなみに、刺身さしみが絶品なのですが、塩焼きにしても他の魚とは圧倒的あっとうてきな味の差があります。個人的には、これまで食べたなかで一番おいしさに感動した魚なんです。

記者:

カリブさんがそこまでおっしゃるとは、食べてみたくなります……!

カリブ:

ちなみに、あざやかな黄色で目がクリクリした幼魚ようぎょが泳ぐ姿はとてもかわいらしいんですよ。

カゴカキダイの幼魚ようぎょ

記者:

色が原因で食べられない、ということもあるんですね。

カリブ:

色が原因といえば、ニシキベラという魚もインパクトがあります。刺身さしみが、蛍光けいこうブルーなんです。

記者:

そ、それは、食欲しょくよくをそそらないかもしれません……。

カリブ:

でも、焼いてしまえば色も気になりません。以前バター焼きにしたらとても美味しかったです。ベラの仲間は、全般ぜんぱん的に味がいいですね。

記者:

食べたことのないものって、たくさんあるんだなぁという気持ちです。

カリブ:

それから、食べ方がわからない、というのもありますね。

記者:

お魚でそんなことってあるんですか?

カリブ:

例えば、アカグツです。

写真提供:有限会社ブルーコーナー

記者:

あ、これはわからん。

カリブ:

体表がトゲだらけで、さわるととても痛いんです。さらに、苦労してさばいても身が少ししかないので、漁師でさえ食べようとしなかったそうです。でも、アンコウの仲間なので味は良く、上品な出汁だしがとれます

記者:

そういえば、先日、かまぼこTV(こちら)でアカグツの赤ちゃんが出てきましたね!とてもかわいかったです。

カリブ:

大人になるとあざやかな赤色ですが、実はこれは深海では目立たない色なんです。赤の光成分を水が吸収きゅうしゅうするため、深海には赤い光はとどかず、黒以上にやみむことができると言われています。

記者:

みんな工夫しているんですねぇ。

博士:

小田原かまぼこで定番のオキギスも、一般いっぱん的にはあまり食べられませんよね。身に水分が多く、さらに小骨も多くて調理がしにくいことから、鮮魚せんぎょとしてはあまり活用されていません。でも、オキギスはかまぼこにすることで、その真価を発揮はっきします。

記者:

かまぼこにすると、どんないいことがあるのですか?

博士:

ほろほろして繊細せんさいな身で、血合いが少ないという特徴とくちょうがあります。かまぼこにとっては、とても上質な素材なんです。オキギスを原料にしたかまぼこは、表面にきぬのような光沢こうたくが生まれ、しなやかで優しい歯ざわりがあり、気品ある旨味うまみていします

記者:

きぬのような光沢こうたく……!

カリブ:

使い方次第で価値かちがぐっと上がるのは、興味深いです。

記者:

もしかしたらかまぼこは、未利用魚とも相性がいいのかもしれませんね。

博士:

そうですね。魚肉たんぱく研究所でも、新しい魚種を使っての実験はいつも行っています。これまで、日本であまり食べられてこなかったシイラや、地元小田原の前浜まえはまでたくさんれるサバなどの魚を活用して、かまぼこをつくってきました。

左:サバやシイラをつかったかまぼこ
右:シイラは、日本ではあまり食べられていませんが、ハワイではマヒマヒとして親しまれている   

記者:

サバでもかまぼこができるんですね!

博士:

サバは、かまぼこに必要な弾力だんりょくが出しにくく苦労しました。このような経験が技術力につながり、それぞれの魚の持ち味をいかした、特徴とくちょうのある商品づくりにつながっています。これからも、限りある魚の資源しげんを大切に、未利用魚の可能性についても研究していきたいです。

記者:

これからどんな新しいかまぼこのお魚ができるのか、楽しみです!かまぼこカリブさん、魚肉博士、どうもありがとうございました!