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茶葉のポテンシャルを最大限に引き出した「こゆるぎ茶屋の丹沢大山茶」

株式会社 茶来未の「こゆるぎ茶屋の丹沢大山茶」

2022.12.12
茶葉のポテンシャルを最大限に引き出した「こゆるぎ茶屋の丹沢大山茶」

神奈川県丹沢山地で有機肥料を使って育てられた茶葉からつくられる「こゆるぎ茶屋 丹沢大山茶」。

茶葉の部位ごとの味わいを活かすために独自の焙煎技術「十二微細分類製茶法」でつくるお茶に込められた想いとは。

茶葉のいのちを生かしきったお茶

佐々木さんは「十二微細分類製茶法」という独自の製法を生み出したことで有名な茶師。茶葉はあの小さな一枚の中にも、養分をたっぷりと蓄えていて味が濃いところ、味の主張が少ないところ、苦味があるところなど、部位によって特徴が違う。佐々木氏は業界でも類がないほどに茶葉の部位を細かく分類し、それぞれ分けて火入れをしていくという技法を生み出した。

その佐々木さんが、神奈川県丹沢山地で鈴廣かまぼこの有機肥料「うみからだいち」を使って育てられた茶葉からつくるのが「こゆるぎ茶屋 丹沢大山茶」である。

大根でも青首と先っぽでは味が違う、それは茶葉も同じ

「お茶はもっとおいしくなると思った」と佐々木さんは独自製法を開発した経緯を語る。

実は佐々木さんは茶師になる前、都内で中華レストランを経営するほどの料理人であった。プロの料理人は食材の持ち味を引き出すために、火の入れ方ひとつとっても様々な調理法を使いこなさなければならない。

大根を例にとってみるとわかりやすいが、大根も葉や葉柄、根も青首部分と先の部分では形も食感も味わいも全く違う。やわらかい葉よりも葉柄のほうが硬いので長めに火を入れるはずだ。

「甘みがある青首部分は生でサラダにするし、真ん中は形がいいから煮物にするし、辛味がつよい先のところは大根おろしにする。葉も同じです。茶葉をわけずに同じように火入れしてしまったら、茶葉が持っている素材の力を十分に発揮できないですよね」

お茶は、場所ごとに違いがあるもの

佐々木さんの茶づくりにはもうひとつ大事な要素がある。それは地域のお茶の個性を創造していくことだ。

「お茶は方言のようなもの」と佐々木さんはいう。

ワインにフランスのボルドー地方やイタリアのトスカーナ地方など、その場所の気候や伝統的な製法によって生み出されたワインがあるように、お茶にもその土地ごとの特徴がある。

例えば静岡県には静岡市本山地区の本山茶、川根地区の川根茶などがあるが、前者はミネラル豊富な土と霧の多い気候によって色鮮やかな緑でフレッシュな茶になり、後者は山間部でとろりとした甘みと芳醇な香りで有名である。

「丹沢大山茶」をつくるにあたっても、佐々木さんは「この土地にしかできない茶とは何か」を問い続けたという。

2015年に神奈川県足柄上郡松田町に自社茶園を保有し、まず土壌分析から着手。気温や気候の変化も細かく記録し、丹沢山地で生まれる茶の特徴を徹底的に調査した。このあたりは山に囲まれていて気候は涼しく、昼間は太陽がしっかりと当たる。

「丹沢山地で育った茶葉は、爽やかな香りと力強い旨み、程よい渋みが味わえる。これを唯一無二の強みとして表現できるように仕上げています」

魚の骨や皮が茶葉に、そして自然に還る

丹沢大山茶の独自性をさらに高めているのが、鈴廣かまぼこが作る魚肥である。かまぼこをつくる際に出てくる皮や骨、内臓などのアラを肥料にしたもので、茶葉の香りを高めるといわれている。魚肥は昔から日本の農業を支えてきた肥料のひとつで、安心安全な農作物を育てると同時に、土壌の活力を回復させる力がある。

「この丹沢山地の茶畑が素材力を持ち続けるためには、この自然環境を残す必要があります。畑に使う肥料は大地にしみこんでいきます。自然な肥料の使用は、環境保全にもつながるのではないでしょうか」と佐々木さんはいう。

小田原は山際を歩けば茶畑が続いている。子どもたちは茶畑の虫をとり、山々に棲む鳥や動物たちの声を聞いてはのびのびと遊んだものだ。あの営みが今も、そしてこれからもずっとずっと残っていってほしい。