魚肉たんぱく同盟コラムVol.21

「食や栄養にこだわれない選手は、トップに上がれない。」 長友佑都、久保建英らを支える木場克己トレーナーに聞く、身体作りと食事。

2022.11.23

サッカー日本代表の長友佑都選手や久保建英選手らをサポートしているスポーツトレーナーの木場克己さん。1993年に当時東京ガス(現FC東京)のメディカルトレーナーに就任したことをきっかけに、サッカー界と関わり始め、独自の体幹トレーニングメソッドを確立した。それは「KOBA式体幹」「KOBAトレ」と呼ばれ、多くの競技やカテゴリーに取り入れられるようになった。木場さんが考えるフィジカルの重要性、食への意識を聞いた。

木場克己トレーナー プロフィール
1965年12月26日生まれ、鹿児島県出身。学生時代は柔道やレスリングを経験。鍼灸師や柔道整復師の資格を得て、整形外科に勤務後、アスレティックトレーナーに転身。1993年に東京ガス(FC東京)のメディカルトレーナーに就任。2002年より、FC東京を離れて個人で活動。長友佑都、久保建英ら数多くの日本代表選手が師事する。著書に「トレーナー木場克己のサッカー専用トレーニング111 サッカー選手のパフォーマンスアップとケガ予防に必要なカラダづくり」(2013年、カンゼン刊)など。

――木場さんが東京ガスに入った時は、どのような選手がそろっていたのですか。
 当時、選手は東京ガスの社員だったんですよ、皆さん。その中にブラジル人が3人ぐらいいて、という感じ。プロサッカー選手ではなく、社員選手なのであんまり身体やコンディションのことは気にしない。試合前日もお酒ばかり飲んでいたり、、、時代もありますが(笑)。

――そのような選手たち、チームとどう向き合ったのでしょうか。
 ケアルームには、ベッド1台しかないんですよ。畳の部屋でした。より良い環境を作りたいと思ったので、チームにはもう少しメディカルの部分を充実させてもらいたいとリクエストしました。当時一番プロフェッショナルな考えを持っていたのは、ブラジル人選手のケリーやロペスでした。他の日本人選手はまだアマチュア。最初の頃は週に数回チームを訪問する程度だったのですが「自分が1年間チームに帯同して選手のコンディションを管理します、東京ガスを強いチームにしたい」と言いました。

キャンプの前に必ず選手1人1人と面談をするようにしていたのですが、怪我の既往歴を持っているかどうかを確認しながら、アレルギーや使用している薬の種類、疲れやすい箇所やその他気になっている部分などを全て書いてもらって。今のように、スポーツメディカルが体型的に整理されていた訳ではなかったので、最初は本当に手探りでした。

――そのような活動を通して、チーム内で木場さんの立場は変わりましたか。
 メディカルとフィジカルの両面を任せるから、ということで、栄養士やチームドクターも自分で探して入ってもらいました。寮に住んでいる選手もいれば1人暮らしの選手もいて、普段食べている食事もコンビニ弁当が多いと。栄養面で選手たちに教えることと言えば、コンビニで何を食べれば良いんだっていうところからのスタートなんですよ。本当に、中学生や高校生に教えてるような内容です(笑)。選手たちは何を食べているかわからないし、そこからちゃんとした栄養学的な部分も含めて伝えていくようになりました。当時は試合前に栄養剤を飲んでいる選手もいたので、ドーピングの観点からも何を食べるか・食べないかを選手自身がコントロールできるようになっていくことは非常に重要だと思います。

食事はコンディショニングの良し悪しに直結するので、栄養士と連携しながら栄養調査も実施して、選手個々に何が足りないか、連戦の時に何を食べるようにすれば良いかを把握するところからのスタートでした。そういう基盤となる部分をしっかり作っていって、選手が自覚しながら意識と行動が変わっていくことで、初めてプロ選手として自立していくのだと思います。

――どのような経験を通して、木場トレーナーの代名詞でもある体幹トレーニングに着目するようになったのでしょうか。
 自分が体幹トレーニングを始めたのは、東京ガスの選手で、腰痛持ちやヘルニアがとても多かったことがきっかけです。中学生〜高校生の年代で抱えた腰痛やヘルニアをずっと引きずっていて、朝起きた時に痛むとかトレーニング前後に絶対ケアしなきゃいけないとか、そういう不具合を多くの選手が抱えていた。腰痛持ちの選手に対しては、腹筋と背筋のアウターの筋肉を鍛えないさいという指導が主流だったのですが、筋肉のよろいを外側に付けるよりも、まずは立つ姿勢やインナーの筋肉を鍛えないといけないと自分は考え、体幹を鍛えるトレーニングメニューを導入していく形になりました。外側の腹筋・背筋だけ鍛えても、24個の短い椎骨が連なっている背骨にべったりくっついているインナーマッスルがゆるんでいると、外の筋肉がいくら頑丈でも、大きな負荷が加わった時に、内側がずれて腰椎分離症やヘルニアを引き起こしてしまいます。

――長友選手との出会いについても教えてください。
 佑都との出会いは、私がFC東京を離れた後のことで、佑都が明治大学3年生の頃です。彼がFC東京の強化指定選手になっていて、GKの土肥洋一に紹介されたことがきっかけです。佑都は東福岡高校出身で土肥は熊本県の大津高校出身なこともあり、同郷意識があったのか可愛がっていたみたいです。当時、佑都は慢性的なヘルニアに悩んでいたので、土肥が「何で強化指定の若手なのに、いつもメディカルルームにいるんだ」と言ったら、佑都は「ヘルニアがひどくてサッカーできないんですよ、、、でも明治大の監督が行ってこいと言うので」ということで。私も宮崎県出身なので、九州繋がりで土肥が繋いでくれた縁ですね。でも実際は、佑都は愛媛県出身なので、生まれは九州ではないですが(笑)。

――当時、長友選手はどのような状態だったのですか?
 強化指定にはなっていたもののロクにサッカーもできず、就職活動もやっていたんじゃないかと思います。フィジカル的には見た目はイメージ通りシックスパックで凄いんですけど、やっぱり筋肉が硬かったんですよね。もも裏や腰のひねりとか。毎日、腹筋背筋200回から300回やってますって。だけど、ヘルニアと腰椎分離症になってしまって、原因がわからない。筋肉を強くすれば良いという考えで、ひたすらトレーニングをしていた状態でした。

――その状態を見て、どのように改善していったのですか?
 佑都は身長が168cmで、他の日本人選手と比べても決して身体は大きくない。それをカバーするためにも、筋トレでフィジカルを強くしようという考えでした。私としては、1度思い切って筋肉のよろいを取ってしまってでも、身体の内側に軸を作り、思い通りにコントロールできるような土台を作らなければいけないと感じたので、彼と会話をしながらアプローチを模索していきました。内側の筋肉=体幹を鍛えていこうと話をしたら「体幹って、腹筋背筋のことじゃないんですか?」って。それも体幹だけど、もっと内側なんだよねというところを教えてあげて、1度その腹筋背筋のアウター系のトレーニングはやめなさいと。まずは身体を立てて、内側の軸を作ろうということからのスタートですね。そうしたら段々腰の痛みが改善していって、大学4年生の時に天皇杯で大活躍して、北京オリンピックの日本代表にも選ばれて。そこからは凄いスピードで世界へ駆け上がっていきました。

――1993年に初めてサッカーに携わった時に感じた、当時の食事事情についても教えてください。
 チームからはジュニアユース、ユース世代の強化も頼まれていたのですが、栄養面では必ず練習が終わったら、炭水化物やタンパク質をすぐ何か食べさせましょうと。おにぎりとかね。運動してすぐのタイミングは、本当はタンパク質を摂るのが一番良いんですけど、なかなか選択肢が無くて。鈴廣かまぼこさんのフィッシュプロテインバーのように、ぱっと手軽に食べられるようなものは当時は特に何もなかった。

ウイダーインゼリーやおにぎりを提供していたのですが、その栄養補給だとタンパク質は摂れていないんですよ。補給できているのはエネルギーだけであって、身体作りの面からも全く足りていない。なので、普段の食事でタンパク質をしっかり摂るように選手たちには伝えていきました。食事や栄養に関しては、監督・コーチも含めて勉強してもらって、選手の意識付けから入ったっていう形ですよね。

――近年の食事事情は、どのような変化がありましたか。
 最近だと「プロテイン何を飲めばいいですか」って聞かれる。だから「いやいや、まずは食事だよ」という話をします。プロテインも大事なんだけど、食事の量と質をまず意識させなきゃいけない。プロテインに頼りすぎてしまうと、バランスよく栄養が摂れないですしね。

――アスリートにとって、食事はどんな意味を持ちますか?
 食はスポーツする上で、生活の一部じゃないですか。食や栄養の部分にこだわれないとトップに上がれないっていう部分もあるし、ケガをしやすい選手はやっぱり食が細い傾向がある。アスリートとして身体作りのベースは食事なので、そこに対しての意識を高く持っていない選手はトップレベルにいくことは難しい。私たちトレーナーが良いトレーニングメニューを考案しても、きちんと食べなければ良いトレーニングにならないんですよ。そこはやっぱりわかってもらいたい。選手には、まず食の重要性から考えてもらいたいですね。

――魚肉たんぱくについての率直なイメージをお聞かせください。
 久保建英は小学校のころから知っているのですが、実は彼は魚が嫌いで(笑)。中学生の時に「魚食べているか?」って聞いたら、「無理して食べています」と言っていました。魚と一口に言っても、赤身なのか白身なのか、タンパク質をどれくらい含んでいるのかなど全然違いますし、調理によっては魚の生臭さを気にせず美味しく食べられると思うし。

そういった意味でも、鈴廣さんのかまぼこは生臭さが全くなくて、美味しくて。タンパク質も沢山含まれているので、選手たちにもおすすめしたいですね。

――長友選手と一緒に取り組んでいる魚肉たんぱく同盟については、どのような印象でしょうか?
 佑都は非常にストイックに食にもアプローチしていますし、鈴廣かまぼこさんを含め良いパートナーと組んでいるなと思います。36歳になっても、サイドバックという運動量が最も多いポジションで日本代表に選ばれるのは、尋常じゃないですね。身体作りや食に対しての取り組み方は、全てのサッカー選手にとってお手本にしてほしい存在ですね。ただサッカーがうまいだけでは、絶対彼のようなキャリアは歩むことができない。先ほどお話ししたヘルニアに悩んでいた時期をはじめ、佑都も途中で数々の挫折をしているわけです。そこで良いトレーニングを取り入れたり、専属シェフを雇って食事を魚肉中心に変えたり。沢山のプロフェッショナルと結託して作り上げたその結晶が、今の長友佑都だと思っています。佑都が今までの取り組んできたこと、そのプロセスはしっかり伝えていくべきだと思います。魚肉たんぱく同盟のような、彼がまさに取り組んできたプロセスを広く伝えるプロジェクトは本当に素晴らしい活動だと思って拝見しています。

――鈴廣かまぼこが発売したフィッシュプロテインバーは実際に召し上がっていただいて、どうでしたか?
 とても美味しかったですし、練習後の疲れたタイミングでもすっと食べられる味・形状だと思うので、補食に良いですね。あとは、やっぱり大人の味覚と子どもたちの味覚は違うので、より子供が食べやすいような味があっても良いんじゃないかとは思いました。どの味が食べやすいか、大きさはどうかなどこれから検証を重ねていかれると、アスリートの強い味方になる商品になっていくのではないかと思います。これからも、魚肉たんぱく同盟の広がりに期待しています。

五勝出 拳一(ごかつで・けんいち)

広義のスポーツ領域でクリエイティブとプロモーション事業を展開する株式会社セイカダイの代表。複数のスポーツチームや競技団体および、スポーツ近接領域の企業の情報発信・ブランディングを支援している。『アスリートと社会を紡ぐ』をミッションとしたNPO法人izm 代表理事も務める。2019年末にマイナビ出版より『アスリートのためのソーシャルメディア活用術』を出版。