小田原からのメッセージ32
富士山の世界遺産登録に思う

日本を代表する名峰として、世界中に知られている富士。
小田原から、あるいは箱根から見る富士山は、
誠に均整のとれた美しい姿を見せてくれます。
数年前、富士山を世界自然遺産に登録し、
環境を守っていこうというムーブメントがありましたが、
ゴミ投棄をはじめ、
自然保護状態が劣悪などの理由から
世界自然遺産への登録が暗礁に乗り上げてしまいました。
遠くから眺めるかぎりでは、
白く雪化粧したその山にゴミがあふれているとは、
まったく想像もできませんけれど…。
その富士山が、再び
世界遺産の国内候補をのせた「暫定リスト」に
選ばれるというニュースが話題になりました。
ただし、今回は「自然遺産」ではなく、
「文化遺産」としての登録です。
古くから
人々の信仰の山としての存在であり、
芸術・文化に影響を与えてきた
富士山を世界文化遺産に!
というわけです。
しかし、このことに
すべての人がもろ手を上げて
賛成しているのではありません。
遺産に登録されると、
土地利用制限が厳しくなることや、
既に対象域内で商売を営んでいる人々に
さまざまな規制がかかることを懸念して、
対象地域に含まれることに反対したり、
世界遺産登録そのものに
異を唱える人々も少なくないのです。
また、対象地域を富士山そのものに限るのか
富士五湖まで含めた裾野地域まで拡大するのかでも、
議論は百出しています。
小田原や箱根に暮らしていると、
つい借景のように富士が見えることに
心地よさを得てしまいますが、
富士山に直結した生活圏の方々には切実な問題といえるでしょう。
世界遺産というものは、
世界中の人のためのものでありながら、
実際には、その登録の是非は
周辺住民や事業者の議論に偏ってしまいがちです。
もっともっと、自らの生活圏にない問題でも
積極的に関心を寄せて発言して欲しいと、
富士山の姿が私たちに訴えているようにも見えてきます。