蓑島 昨日が誕生日で、九十一歳になりました。
鈴木 おめでとうございます。長寿の秘密は、毎日お魚を召し上がっておいでだから?
蓑島 日本人はもともと農耕民族で、欧米人のような狩猟民族ではありませんのでね、体質的にやはり魚食が合っているのでしょう。
先夜、大きな魚にでも追われたのか、イワシが近くの浜に打ち上げられまして、皆、バケツを持って拾いにいきました。天然の恵みを丸干しにして、今朝もいただきました。
鈴木 イワシも旬を迎え、おいしいですね。ちょうど今時分、子どもの頃の朝、地引き網を引く手伝いをしては、腰に付けたザルにお駄賃のシラスを入れてもらったものです。夕方になると漁師さんが、今日はナギサだとかイナダシケだとか話すのを聞いて過ごしたものですが…。
あるとき、その漁師のおじさんが、「ちえちゃんよぅ、おめえはチェッコスロバキアから貰われて来たんだってなぁ」って(笑)。
本当にそれを信じてしまって、人知れず悩んだものです。
何でかというと、私は、父に連れられて海岸でばっかり遊んでいたから顔は真っ黒だし、"飛びっこ"(小田原言葉で駆けっこのこと)がとても速いし、妹たちとずいぶん違っていたのす(笑)。
蓑島 ハッハッハ。網元のお嬢ちゃんをちょっとからかってやれと…。
昔の子どもは、よく浜で遊んだものでしたね。私は、茹でたお芋を餌に、クロダイ釣りに熱中しました。今の川は汚染物質を流しますが、昔は、上の方でお百姓が洗うお芋を流したりするのでクロダイが食べに来てたんですね。
鈴木 波の引いた後、砂に一センチ程の穴を見つけて、麦ワラを差してみると、ちょっと動くのですね。そこを手で静かに掘ると、小さなカニがいるのです。それは面白い砂遊びでした。
蓑島 ああ、スナガニですね。水が来ると、穴からぶくぶく泡が出てね。思いっきり遊ぶ場の無い今の子どもは可哀相ですね。
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