小田原からのメッセージ29
小田原を流れる水


小田原は水の豊かな街といわれます。
寛文十年(一六七〇)に完成した箱根用水は
小田原城の堀を満たし、
富水、蛍田など、
いかにも水に恵まれていることを
彷彿とさせる地名も数多くあります。
その水脈をたどれば、さまざまな方面に行き着きます。
北西側からは富士山の雪解け水が、
北東からは丹沢山麓に降った雨が、
そして、西からは箱根の山々に降った雨がやってきます。
小田原につながる森林は、自然の水瓶でもあるのです。

異なる地層を通ることによって、
水はさまざまな特徴を身に付けます。
ある水脈は、カルシウムやマグネシウムを少し含んだ
硬度が高めの清冽な味。
あるものは、かなり鉄分があって赤っぽい色をした水。
また、温泉の影響で炭酸や硫黄分を含む水もあります。
かつての小田原の人々は、
それぞれの水を使い分けてきました。
たとえば、
かまぼこにはやや硬度が高くPHが中性の水を、
酒造りにはその酒の個性に応じた水を…。

ところが、近年は川の表流水を
浄水場で上水道にしているため、
小田原の地下水の妙を
実感できなくなってきたようです。
小田原の水の豊かさ、水質の多様性、
水源がどこかを知っていること…。
それは、この土地の素晴らしさを認識し、
自然に対する深い理解と愛情へ
つながるのではないでしょうか。