![]()
| 日本人の感性に訴える ビーフステーキはまさに芸術品 |
炭火焼ステーキ懐石「あらがわ」本店 代表取締役社長 風間 昭氏
聞き手 株式会社鈴廣蒲鉾本店 代表取締役会長 鈴木 智恵子
| 但馬牛は代表的な和牛の一つです。この但馬牛にこだわりつづける風間社長。 長年の経験をもとに創り出される但馬牛のビーフステーキは、 牛肉本来の旨味を存分に引き出した味の芸術作品です。 |
| ビーフステーキ本来の姿を追い求めて 鈴木 |
かざま あきら氏
|
買いたいと思う牛は大体 深窓育ちのお嬢さんタイプ
| 風間 いやいや一頭買ってもどうにもなりません。何しろ一頭の目方が六〇〇キロを優に 超えるんですから、ステーキに使える部分だけを頂戴して、あとは肉屋さんが捌くように なっています。私どもで使っている部位はフィレ(テンダーロイン)、ロース(サーロイン) ですが、本来のビーフステーキはフィレの真ん中のシャトーブリアンとロースの真ん中の ロインと呼ばれる部分です。いずれにしても最上級の肉質のところばかりで、600キロの うち私どもが使えるのは大体44キロか45キロ、これがお客さまにお出しするときは、こ の半分ぐらいになってしまいます。 鈴木 |
風間 |
![]() レンガ造りの炉について説明する風間氏 |
| 鈴木 いただいて初めて価値が分かり、納得し美味しさに感激するのでしょう。素材の良さも さることながら、調理にも工夫が色々おありなんでしょうね。 風間 いってみればステーキというのも料理の一つですから、素材の風味を如何に上手に引 き出すかで勝負は決まってしまいます。それには使う部位、厚さ、火の通し方、焼き方 (食べる側の要望)の四つが揃わないと駄目ですね。 |
| 素材選びが難しい時代になってきた 鈴木 |
![]() |
| 美味しいものを食べるには、愛情を込めて育てた 素材が必要なんですね |
| 鈴木 普通は鉄板で焼きますよね、蓋をちょっと かぶせて。目の前で焼いてもらうと、お肉の 焼けるときの音と香りで美味しさが一層 引き立つようで、見た目も恰好がいいのですけど。 風間 鉄板ですと下からの熱しかありませんから、 結局、蓋をかぶせて蒸し焼きみたいな形に しないと火が通りにくく、熱効率が悪いんです。 それで私どもでは全体がオーブンのように なっている特注のレンガの炉で、四方から 肉の繊維に平行に火を入れて焼く方法を とっています。こうすると備長炭と灰が出す薫煙の 作用で肉の旨味がじわりと滲み出てくるんです。 灰には何か不思議な働きがあるんでしょうか。 よく遠赤外線の効果が云云されますけど、私ども 専門の方では近赤外線、つまり波長の短い 赤外線と言っておりますけど、炭と灰からこの 「近赤」が出て早く焼き色が付くんです。レアから ミディアムという風に段階を経るのには多少時間 がかかりますが、その間に灰がもっている作用を ステーキが吸収して旨味が出てくるんですね。 ただ、肉質が悪いと炭と灰のエネルギーに負けて しまって、美味しいステーキが出来ないんです。 |
|
| 鈴木 まあ、炭と灰にはそんな目に見えない、すごいエネルギーがあるんですか。でも、いい 灰を手に入れようとすると、最近ではなかなか難しいですよね。お茶席で使う灰にしても 一袋いくらという時代ですものね。 風間 灰だけでなく備長炭にしても原木の姥女樫(うばめがし)が少なくなってきていますから、 確保するのが段々に難しくなってきているようです。たまたま日本には炭の文化が伝統 として残されていますから、炭を使って焼く方法はこれからも追いかけて行きたいと考え てはおりますけど。 鈴木 お塩も吟味されるんでしょうね。 風間 塩は使う量が少ないので、それほどこだわってはおりません。最近は天然塩が引っ張 りだこですけど、肉を焼く場合はニガリが強すぎると味に影響するんで使い方が難しい んです。 鈴木 蒲鉾の場合は、蒲鉾独特の弾力に富んだ食感のもとになるタンパク質を引き出すのに 塩はどうしても必要で、それも良質の塩でなくては駄目なんです。塩が専売の時代はやむ を得ず精製塩を使っておりましたけど、今はすべて天然塩に切り換えました。 風間 何にしても、よい素材を確保するのが難しい時代になりましたね。 鈴木 遺伝子組み換え食品などが現れる時代ですものね。 風間 牛の世界だってそうですよ。受精卵をレーザー光線で二つにカットして借り腹で育てた 牛とか、体細胞クローン牛なんかが市場に出回り始めていますからね。一頭一頭を愛 情込めて育てるような環境が失われつつありますし。三田なんかも牛を飼う農家が減る 一方で、後継者不足も大きな悩みです。いつまで但馬三田牛にこだわりつづけられるか 心配の種は尽きません。 鈴木 やはり美味しいものを食べるには、愛情込めて育てた素材が必要になるんですね。ひ とくちにビーフステーキといいますけど、お話をいろいろ伺っておりますと、奥の深いお料 理だということがよく分かりました素材選びや確保が難しい時代になりましたけど、私たち 食を提供させていただく営みをするものは、体に優しく、美味しいものづくりが任務になる と思います。いつまでも美味しいステーキが食べられたらいいですね。今日はお忙しいな かを有り難うございました。 |